The Lost Episodes ★★★★

Lost Episodes

Frank Zappa / The Lost Episodes

::★★★★::1996::Rykodisc::pop::rock::
iTMS US

(zappa catalog #64)

ザッパの死後に出た好コンピ‥といってもレア音源集ですが。最初聴いたときあまりにとっちらかった内容で、しかもクオリティーの低い演奏も多く混じっていたので「なんじゃこりゃあ!」と怒ったりしたものですが、今聴きかえしてみると、これはこれで愛すべき作品だなと思うようになりました。ザッパの未発表音源集としては非常にレア度、あるいはマニアックな内容で、ほとんどゴミみたいな録音もいっぱい入っているのですが、ガレージのカビ臭い片隅に色んなゴミが所せましと並んでいるという塩梅で(CD一枚に30曲入り!)、なんとなく味があるのであります。曲はほぼ時間系列順にならんでいて、古いものはザッパがティーネイジャーだったころの50年代の録音から、新しいものは70年代末のものまで。ザッパのリアル高校生だったころの演奏といっても、ボーカルをやってるのが同級生のキャプテン・ビーフハートだったりするから、ただの高校生バンドのアマチュア録音とは違います。いや、クオリティーはまあ、そのへんの高校生レベルですが、ビーフハートとザッパの高校時代の演奏なんて、歴史的価値がありすぎ。このアルバムにはいくつかビーフハートの声が聴ける曲があるのですが、いやあ、貴重ですね。とりわけ良いのがtr8「Tiger Roach」。ビーフハートの異能ボーカルが炸裂する超強力曲。学校の教室で録音したというザッパのギターとビーフハートのボーカルのみのtr2「Lost In Whirlpool」は、非常に泥臭いブルーズで、二人のルーツを感じさせます。ビーフハートがファルセットで歌ったりするのもおもしろい。ビーフハート曲では天狗になっているロックスターを描いた詩の朗読tr20「I'm A Band Leader」、そして70年代になってからのクオリティーの高いブルーズロック「Alley Cat」が良いです。

ビーフハートのことばかり触れてしまいましたが、他の聴きどころとしてはアルバム前半〜中盤に挿入される「Run Home Slow」(ザッパがマザーズデビュー前にスコアを書いた映画)からの短かい曲いくつかが良い味です。もっとも、これらの曲は「Old Masters」のボーナスディスク「Mystery Disc」に収録済みで目新しさはないですが、改めて聴くと良いですね。それから、70年代の「Grand Wazoo」と「Overnite Sensation」の間に録音された「Kung Fu」「Rdnzl」などがようやく陽の目をみたのも注目どころ。

その他、既発曲の未発表バージョンでは、ワイルドなtr23「Wonderful Wino」がなかなか新鮮。ドン・シュガーケイン・ハリスのボーカルによるtr30「Sharleena」もおもしろい。

ということで、ガラクタ市みたいで楽しいアルバム。ジャケも良し! (#9/16/02)