Can You Party? ★★★★

Can U Party (Bonus CD)

Royal House / Can You Party?

::★★★★::1988::Champion::club::house::
iTS US / iTS JP(→iTSについて

ハウス初期のサウンドの革命と方向転換を体現した歴史的一枚。この時期トッド・テリー(といってもトッド・テリーってその後もずっと同じなんですけど)の何が革新的だったかというと、それまでのハウスといえば、わりに鈍重なビートに、ゲイ・ディスコの流れを汲む楽曲がのっかっていたのですが、トッド・テリーはまず、四つ打ちキックのハウス・ビートの定型を維持しつつ、スネアの音を極限まで軽くし(マイアミ・ベースの影響だという説があります)、また、ハイハットの音をとことん機械的にした。結果、まったく新しいビートが生まれたのです。このビートの影響は、その後のハウス、そしてテクノのいたるところで聞くことができ、まさに革命的でした。次に、楽曲の面では、ヒップホップのフリースタイルの影響をとりこみ、楽曲の解体およびサンプリングを中心にした方向へとハウスを導くことになったのです。

このアルバムは、特にヒップホップの影響が強く、それゆえほとんど一曲一曲が楽曲の体裁をあまり成しておらず、どちらかというとビートとサンプリングの集大成という感じ。それゆえ当時のトッド・テリーの先進性が浮き彫りにされた形となっています。

このアルバムの目玉はなんといっても冒頭の「Can You Party」ですね。トッド・テリーの名を不動にした古典。ハウス黎明期の大古典であるマーシャル・ジェファースンの「Move Your Body」からのサンプリングを執拗にループして、ジャクソンズのライヴからの「Can you feel it?!」というMCを乗せたこの曲、ビート以外はほとんどサンプリングのカットアップで構成され、「音楽的要素」の欠如が当時非常にアナーキーかつ斬新だったわけです。で、他の曲でこの曲に匹敵するような目玉はありませんが、それよりアルバム全体に通底する勢いみたいなものを楽しみたいところですね。ヒップホップ色の強いところでは、ハープを押し出した、攻撃的でカッコいいtr8「The Chase」、それにtr7「This Is Royal House」が良い(いずれもラップなし)。ハウス・ビートのtr6「Yeah Buddy」にしても、構成らしきものもなく、サンプリングの応酬で、非常にヒップホップっぽい。それから、このアルバムは、ヒスパニック・ムードがぷんぷん漂ってるところもおもしろい。しかもチープ。

ワイルドでうさんくささ満点の好盤! (12/27/02)

[追記 4/30/2007]iTS USのは、12曲のボーナス曲つき。