2008年度(日本編)

いかん、もう2月だ。タイミング遅れましたが2007年度に引き続き、iTunes Storeの年間チャート(曲単位)のトップ50を大人買いして片っ端から感想を書くコーナーをやりたいと思います。日を改めてUS編もやる予定。

それはともかく日本版の概観です。まず、邦楽・洋楽の割合ですが、洋楽はTop 50で3曲。去年より1曲増えました。コールドプレイ、マドンナ、アリシア・キーズですか。コールドプレイってそんなに人気あるんですね。マドンナのはキムタクのドラマの主題歌だそうで。よく知りませんが。

邦楽の方ですが、相変わらずバラードばっかりです。日本人のバラード好きは韓国人に並びますね。今年は「青山テルマ」の年だったようですが、その影響で「せつない女性ボーカルに男がぼそぼそとラップする」曲が何曲か入っています。4位のSpontania feat.JUJU / 君のすべてに、34位の 童子-T / もう一度...feat.BENI あたり。この手の曲は俺的には「ポジティブ励ましソング」ほどは苦痛ではありません。

他に目立つのはEXILEと絢香。EXILEはなんと6曲も入っています(5, 14, 15, 31, 33, 40)。絢香もコブクロとのデュエットを含め、5曲ランクインです(11, 13, 27, 29, 45)。次に多いのがiTunes Storeの常連、宇多田(3, 20, 32, 48)、次にベテラン安室(28, 36, 48)がしぶとく続きます。宇多田はここ数年毎年1位だったので、ついにそれを明け渡したという感じでしょうか。でも宇多田の強さは続きそうです。安室はもはや「日本のマドンナ」という感じですね。だいぶ若いけど。

全体としては、バラード中心とはいえ去年よりはバラエティーがあって楽しめました。

というわけで、以下、感想を書きなぐります。たかだか1曲や2曲聴いただけで判断するのは無茶だと分かりつつ、お気に入り度を★で記しますが、「★★★」が標準。「けっこういいな」と思ったら「★★★★」、「これはけっこう聴くのがキツい」と思ったら「★★」。「★★★★★」は、「この曲なら何回でもリピートオッケー!」という曲です。

ではでは、本年度分。

1. 青山テルマ feat. SoulJa / そばにいるね (2008) ★★★

去年48位だった(今年も44位)SoulJaの「ここにいるよ」の青山テルマ・バージョン。「ここにいるよ」はSoulJaの女々しいラップが耐えられなく、青山テルマのボーカルは好きだったので、ラップが最小限のこの「そばにいるね」は歓迎。…のはずなんだけど、すばらしいメロディのサビに対して、Aメロ(verse)がいまいちというか、なんか後から取って付けた感じであまり馴染んでない気がします。

2. GReeeeN / キセキ (2008) ★★★

昨年もっとも身体が拒否反応を起こしたのがGReeeeNの「愛歌」でしたが、この「キセキ」はシロウトっぽさが後退して、ずいぶんと聞きやすくなりました。元気のいい、デリカシーのないミスチルって感じ。

3. 宇多田ヒカル / Prisoner Of Love (2008) ★★★

去年スーパー同居人ちゃんの友人のアメリカ人が日本に長期滞在していたんですが、「コンビニに入るたびにPrisoner Of Loveがかかっていて発狂しそうになった」と申しておりました。それだけヒットしたということですね。でもけっこう地味な曲のような気がする。終わりの方の「Stay with me」のくだりが好き。それ以外はふつう。

4. Spontania feat.JUJU / 君のすべてに (2008) ★★★

「ここにいるよ/そばにいるね」系の「せつない女性ボーカル+バッドボーイの純情ラップ」の組み合わせの曲。エフェクトの処理のせいだと思うんだけど、JUJUのボーカルがこれでもかと感傷を煽ってきます。嫌いじゃないです。

5. EXILE feat. VERBAL (m-flo) / 銀河鉄道999 (2008) ★★★

EXILE 1曲目はなぜかゴダイゴのカバー。EXILEのソフトなボーカルを「新たな味」と感じるか、「物足りない」と感じるか、微妙なところ。この曲って名曲だと思うんだけど、メロディーは意外に単調で、タケカワユキヒデのボーカルの存在感でぐいぐい聴かせる曲なんだよね。EXILEのソフトで甘いボーカルだとメロディーの単調さがちょっと気になる。

6. 藤岡藤巻と大橋のぞみ / 崖の上のポニョ (2008) ★★

大ヒット映画の大ヒットテーマ曲。小さな子どもがいれば一緒に楽しめるのかもしれませんが、大人がこれを聴くのはかなり苦痛であります。

7. 青山テルマ / 何度も (2008) ★★★

「そばにいるね」に続くシングル。「そばにいるね」を踏襲した路線だけど、うーん、普通。

8. GReeeeN / 愛唄 (2007) ★★

去年2位。

9. Superfly / 愛をこめて花束を (2008) ★★★★

ちょっと気になっていた女性ボーカリスト(いちおうユニット?)。あからさまにウッドストックなルックスなのでどんな音楽性なんだろうと思ったら出だしはわりと普通。しかし後半の盛り上がりで爆発的ロックボーカルに突入して、聴いていて思わずのけぞった。こういう荒削りで古いロックがチャートに入るなんて日本のシーンも捨てたもんじゃないですね。暑苦しそうでいて、後味はあくまでさわやか。

10. キマグレン / LIFE (2008) ★★★

チャゲアスとチューブを合わせて洗練させた感じ。チャゲアスもチューブも大変苦手ですが、嫌みのないブラジリアン・リズムのおかげで、それほど抵抗なく聴けます。

11. 絢香×コブクロ / WINDING ROAD (2007) ★★★

前年度も10位に入っていました。まっとうで歌が力強い曲。まっすぐすぎ&うますぎでちょっと引く。

12. 羞恥心 / 羞恥心 (2008) ★

クイズバラエティーから派生したお馬鹿芸人ユニット。まさにゴミ。吉本新喜劇オール・スターズの「エクスタシー」を聴いているほうが10,000倍良い。

13. 絢香 / おかえり (2008) ★★★★

絢香は歌がうまいですね。この曲はバラードですが、日本のバラードでは珍しく馬鹿恋愛でなく家族や故郷を歌った曲で、平凡といえば平凡なテーマだけど、絢香の歌唱がその普遍的テーマに説得力をもたせています。緩急の付け方が絶妙ですね。素晴らしいです。日本語であることを除けば、ビルボードチャートにあっても不思議でない曲です。

14. EXILE / Ti Amo (2008) ★★★★

スパニッシュ風味(タイトルはイタリア語ですが…)のアレンジがEXILEの「ジゴロ」イメージにぴったり。歌詞も不倫がテーマで、うっとおしい「みんな頑張れ」系の励ましソングや「おまえの前ではなんにも言えねえ」系の純情バッドボーイ路線のガキっぽさとは対極にある、大人が濡れそぼつ甘茶な世界。韓流バラードっぽくもある。初めて「EXILEっていいかも」と思ってしまいました。ただ一つ受け付けないのが亀田みたいなATSUSHIのルックス。あのルックスならK-Ci & JoJoのK-Ciみたいなインパクトある声が出てなきゃ嘘。

15. EXILE / Lovers Again (2007) ★★★★

去年5位。良い曲です。

16. 東京事変 / 閃光少女 (2007) ★★★★

おっ、東京事変。配信のみのシングルだそうです。初期の椎名林檎っぽいストレートで力の抜けた佳曲。ソロ3枚目から先の椎名林檎はアイデンティティをもとめて考えすぎていたようなところがあったと思うのですが、この曲は配信オンリーという気楽さからか、実に普通の椎名林檎で、こういう林檎がぼくは好きです。

17. 大橋卓弥 / はじまりの歌 (2008) ★★

スキマスイッチの片割れのソロ。なんか歌い方が気持ち悪いんですけど…。スキマスイッチは去年聴いた2曲の印象としては、ちょっと庶民的なスピッツという感じで、コード進行なども凝っていて洗練があったように思いますが、この曲はソロということで、もっとシンプルでフォークっぽく、泥臭く、それに合わせて歌が意識的に?クセのあるものになっているのですが、聴いていてなんというか…延髄に飛び蹴りくらわしたい気持ちになってきます。

18. MONKEY MAJIK / Together (2008) ★★★

こちらも常連になりつつあるMONKEY MAJIK。同じ甘ったるい歯の浮くような歌詞でも、ボーカルの力と楽曲の洗練しだいで説得力を持つという良い手本だと思います。

19. Coldplay / Viva La Vida (2008) ★★★

人気あるんですねえ、Coldplay。実はあまりしらないんですよ。なんか不思議な曲ですね。この一曲だけではどういう音楽性なのかいまいちよくわからないので、判断は保留。

20. 宇多田ヒカル / HEART STATION (2008) ★★★

普通。

21. KOH+ / 最愛 (2008) ★★

この曲はキツい。柴咲コウと福山雅治のコラボなんだけど、福山の感傷ベタベタの素人っぽい歌世界が柴咲に全然合ってないように思えます。鼻声で「まだすきぃ〜だからあ〜」と歌われるところで悪寒が走ります。柴咲にはもっとさっぱりした曲が合っている。

22. 山下達郎 / ずっと一緒さ (2008) ★★★

こんなところで達郎に出会うなんて感無量です、色々と。でもどうだろ、この曲。時流に合わせた「臆面のない感傷寄り添い」系の曲なんですが、うーん、どうなんだろ。といっても山下達郎にそれほど思い入れはないんで、「こんなの達郎じゃない!」というふうには思いませんが、純粋に楽曲としてどうなんだろ。洗練の最先端を行っていたボーカルも、さすがに若手の中では古い感じもします。そこが逆に良いとも言えますが。

23. Madonna / Miles Away (2008) ★★★

キムタクのドラマの主題歌として書き下ろされたらしい。まあまあ。

24. MONGOL800 / 小さな恋のうた (2001) ★★★

うわ、なんだこの曲!? 調べると沖縄のメロコア青春パンクバンドのようで、YouTubeを見ると、ブルーハーツからカリスマ性を取ったような感じなんだけど、この曲はけっこういい。デモテープなんじゃないの?というぐらいデッドでしょぼい録音で、そこがパンクの心意気を感じて大変好感持てます。…と思ったら、インディーズ時代の曲なのね。メジャーでもこの音だったら素晴らしい。

25. FUNKY MONKEY BABYS / 告白 (2008) ★★

FUNKY MONKEY BABYSの曲を聴くのはいつも試練なのですが、この曲は苦手。てか、日本人ってなんでこんなに「告白」が好きなんかね。人生のおもしろさ、深さは告白の後に山ほどあるのに、最近の歌に歌われるのは告白や付き合い始めの「大好き!」という初期衝動ばかりで、引いてしまいます。

26. 福井 舞 / アイのうた (2008) ★★★

絢香タイプ?のバラード。特に感想はありません。

27. 絢香 / 手をつなごう (2008) ★★★

ファルセットにブレス抜きを組み合わせるテクニックがあざとさと個性の間のきわどいラインを行っています。

28. 安室奈美恵 / NEW LOOK (2008) ★★★

この曲はすごく変な曲で、どう評価してよいものか、とまどってしまいます。この「New Look」と49位の「What A Feeling」はソウルの有名曲をテーマにした企画シングルからの曲だそうで、この曲はシュープリームスの「Baby Love」に基づいています…といっても、サビの一節とバックのリズムがサンプリングされている程度でほとんどまったく別の曲になっています。しかもなんだか「プラスチック」というキーワードが瞬時に頭に浮かぶほど無機質でフューチャリスティックかつレトロな雰囲気で、歌詞もメロディーもなんだかアンドロイドチックで、実に聴いていて居心地が悪いのです。しかし、居心地が悪いながらもなんだか耳にこびりつくような曲でもあり、どう考えたら良いのか、脳みそをかく乱するような独特の楽曲であります。

29. 絢香×コブクロ / あなたと (2008) ★★★

良い曲じゃないですかね。「Winding Road」と比べて、絢香の存在感が増していて、コブクロが食われ気味です。

30. トータス松本 / 涙をとどけて (2008) ★★★

スキマスイッチ大橋卓弥のソロと同じく、ウルフルズのトータス松本のソロは自身のバンドよりももっと弾き語りっぽいテイストの曲でボーカルも雰囲気がいつもとちょっと違いますが、気持ち悪かった大橋のボーカルと違い、松本のボーカルはゴツゴツとした手触りのなかにセンチメンタルさがまぶされるという形になっており、説得力があります。

31. EXILE / ただ…逢いたくて (2005) ★★★

去年21位。ふつうの良さです。サビが普通のJ-Popっぽくて、そこがあまり好きじゃないかも。

32. 宇多田ヒカル / Stay Gold (200) ★★★★

この曲良いですね。たいへん地味な曲ですが、こういう押さえた曲だからこそ宇多田の世界観が生きるような気がします。

33. EXILE / I Believe (2007) ★★★

ミディアムテンポのグルーヴィーなナンバー。良いですね〜。R&Bっぽい感じと歌謡っぽい感じが絶妙にまじりあっています。それでいて決して暑苦しくならない。あくまでソフト&スムース。

34. 童子-T / もう一度...feat.BENI (2008) ★★★

また「せつない女性ボーカル+バッドボーイの純情ラップ」の曲。これまた悪くない。でもいくら売り上げのためとはいえこんな安っぽいメロドラマみたいな内容のラップでいいのだろうか、童子-Tさん。

35. コブクロ / 桜 (2007) ★★★★

去年27位。悔しいが良い曲。

36. 安室奈美恵 / Do Me More (2008) ★★★

マドンナっぽい…と思う。

37. 新垣結衣 / heavenly days (2007) ★★★

でたっ! 新垣が深夜のバラエティー番組「落下女」に出ていたころ、南海キャンディーズしずちゃんを中心に杏さゆりと「ニャンと! LOVEリング」というお笑い曲をやってまして、新垣も少しだけ歌っていたのですが、これがドヘタで、歌手デビューを聴いたときどうなるか心配だったのですが、これがまあびっくりするほどの甘甘のシュガーボイスで録音されており、破壊力抜群です。ちょっとチャラっぽいか。微妙なピッチの推移に、脳細胞が破壊されること必至。

38. X JAPAN / 「I.V.」 (2008) ★★★

すごいなー、X Japan。もちろんぼくが嫌いなタイプのバンドですが、けっこう良い曲です。ハードロックなのにあくまでソフト&スムース。後半でドラマチックに転調するところは特に素晴らしい。さすが耽美派のベテランです。

39. Alicia Keys / No One (2007) ★★★★★

好きな曲なのでランクインして嬉しいです。ちなみに2007年度 iTS (US) 31位、2008年度 iTS (US) 21位の曲です。

40. EXILE / Pure (2008) ★★★

さすがにここまでEXILEを聴かされると飽きるな…って別に誰に聴かされているわけでもないけど。

41. 木山裕策 / home (2008) ★★★

この曲を有線で初めて聴いたとき、えらい歌い方が古い人だなあと思ったんですが、素人さんだったんですね。正直、こういう押し付けがましい曲は苦手で、同じ故郷や家族を歌った歌でも、絢香の「おかえり」のプロの完成度とは天と地ほどの差があると思いますが、この朴訥な、業界ずれしていない歌唱でなんとなく許せてしまいます。

42. アキノ / 創聖のアクエリオン (2005) ★★★★

昨年19位だったアニソン。良いです。

43. MONKEY MAJIK / ただ、ありがとう (2008) ★★★

悪くないけど、このパターンも飽きたというか、もうちょっと違うバリエーションの曲を聴きたいような。

44. SoulJa / ここにいるよ feat. 青山テルマ (2007) ★★★

昨年48位。

45. 絢香 / 三日月 (2007) ★★★

昨年27位。

46. コブクロ / 永遠にともに (2007) ★★★

昨年36位。

47. FUNKY MONKEY BABYS / 旅立ち (2008) ★★★

今日も今日とて、自信のない人を励ましています。

48. 宇多田ヒカル / Flavor Of Life (2007) ★★★★

昨年1位。こうして聴くと「Prisoner of Love」より良い曲ですね。

49. 安室奈美恵 / WHAT A FEELING (2008) ★★★★

28位の「NEW LOOK」とともに、ソウル/ダンス・クラシックをテーマにした曲。この曲はアイリーン・キャラの同名曲ですが、エレクトロなAメロから、ハウス/トランスなサビへの流れがカッコいい。ボーカルの印象が弱いのが残念。

50. 矢島美容室 / ニホンノミカタ-ネバダカラキマシタ- (2008) ★★★

米米クラブの後継者、綾小路オズマが送り出すネタ曲。「羞恥心」に比べるとすべての面ではるかに良い。…けど積極的に好きということも全くない。

以上。