ビーチ・ボーイズについて

f:id:ghostlawns:20060618011120j:image

The Beach Boys

genre: pop/rock

写真左から、カール・ウィルソン(主にg)、デニス・ウィルソン(ds)、マイク・ラヴ(リードボーカル)、アル・ジャーディン(主にg)、ブライアン・ウィルソン(主にb、リードボーカル)

【概観】


ビーチ・ボーイズといえば、世間一般的には「軽薄でお手軽な60sオールディーズ」、音楽ファン的には「もっともマニアの多いカルト的バンドのひとつ」という、おそるべき分裂があるのですが、ある意味、どちらも本当のビーチ・ボーイズの姿だといえるのがおもしろいところです。軽薄なのも事実、世界でもっとも奥の深い高度なポップミュージックを生みだしていたというのも事実です。その最も高度な瞬間はビートルズの最高点を超えているとさえいえるのですが、非常にクレバーであったビートルズと違い、いまひとつどんくさいビーチ・ボーイズは最後まで「軽薄サーファー音楽」というレッテルをひっくりかえすことができないまま、自滅してしまったという感じです。しかも、現在の、リーダーであるブライアン・ウィルソンを抜いたビーチ・ボーイズは、その「軽薄」な側面の遺産でツアーをやったりしているのだから、世話ないというか、まあ、ビーチ・ボーイズらしいというか。

とはいえ、ですね、本当の、最高のビーチ・ボーイズの魅力は、逆説的ですが、音楽的に高いレベルに徹底した有名な「ペット・サウンズ」よりもですね、やっぱり「軽薄」とそしられつつも大ヒットをとばしていた時代の中にこそあると思うんですよね。正直、この時代のビーチ・ボーイズのアルバムは、非常にテキトーにつくられてまして、ビートルズの同時代のそれと比較するなんてとてもできません。しかし、そのムラっ気のなかに、時々「神降臨!」と思わんばかりの名曲がとびだしてくるという、ジェットコースターのアップダウンのような振幅に身体が慣れてくると、けっこうやみつきであります。ほんとか?

ということで、「Surfin' USA」「Surfer Girl」「Shut Down Vol.2」の三枚は禁断的オススメであります。

【活動】

  • 1961年、ウィルソン三兄弟といとこのマイク・ラヴ、友人のアル・ジャーディンで「the Pendletones」結成、インディーで「Surfin'」のヒットをとばし、キャピトルと契約、その際、イメージ戦略的に「The Beach Boys」と改名させられる。
  • 1962年、「Surfin' Safari」でアルバムデビュー。その後、破竹の勢いでヒットをとばす。天才コンポーザー、ブライアン・ウィルソンの作曲もさえる!
  • 1965年、ビートルズの「Rubber Soul」にブライアン・ウィルソンが衝撃を受ける。
  • 1966年、ビートルズへの回答として傑作「Pet Sounds」を発表。ビートルズのアルバムよりも複雑でかつポップなアルバムとなった。が、「ビーチ・ボーイズ=サーファー音楽」というイメージガ固定しすぎている一般聴衆にはうけいれられず、コケる。
  • それにこりず、ブライアン・ウィルソンは「Pet Sounds」以上の一大絵巻「Smile」の製作に入るが、もともと精神的に不安定でドラッグ癖のあったブライアンはアーティストとしてのプレッシャーに負け、アルバム製作は頓挫。ブライアンは隠遁。「Smile」は、ブライアン抜きで「Smiley Smile」として世にでるが、「Pet Sounds」のはるか上をいく実験性のおかげでセールス的に完全にコケる。先行シングル「Good Vibrations」のヒットを最後に、ビーチ・ボーイズがチャートを賑わすことは二度となかった。
  • 廃人となったブライアンを抜いたビーチ・ボーイズも、60年代後半から70年代にかけて、地味に好作品を出しているのは実は見逃せない。
  • 1983年、ドラマーのデニス・ウィルソンがダイビングの事故で逝去。Sunnyなグループイメージとは裏腹にDorkyなメンバーの多いビーチ・ボーイズの中で、実生活でもワイルドな海の男だった愛すべき男の死であった。
  • 1988年、廃人同様だったブライアン・ウィルソンがドラッグから足を洗い、復活、ソロアルバムを出す。
  • 1998年、カール・ウィルソンが癌で逝去。

(9/8/02)