Tide ★★

Tide

Antonio Carlos Jobim / Tide

::★★::1970::Polygram::pop::brasil::
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偉大なる作曲家、アントニオ・カルロス・ジョビンの、「Wave」(1967)の続編的アルバム。全曲インスト。でもね〜、ぼくはジョビンの曲はインストよりちゃんとボーカルが乗った方がずっと良い気がするんだよねぇ。ジョビンの曲はシンプルかつ複雑なのが魅力なわけだけど、「複雑」なのは主にバックのコードのちょっとしたひねりであって、メロディ自体は「ワン・ノート・サンバ」(一音サンバ。ジョビンがジョアン・ジルベルトとともに「発明」したボサ・ノーヴァという音楽のメロディが一音だけからでも成り立ちうるということを歌った曲)に象徴されるように驚くほどシンプルなんだよね。だから、繊細な表現力を持った人声が機知に富んだ歌詞とともに紡ぎだすときに最大の威力を発揮するわけで、インストゥルメンタルにすると、メロディのシンプルさゆえあっという間にイージーリスニングに陥いってしまいかねない。そうなると良くてデパート、悪くてスーパーマーケットのBGMに聴こえてしまう。たとえば、このアルバムの一曲目の「イパネマの娘」のインストバージョンは、ゴージャスかつ繊細なストリングス・アレンジは見事なんだけど、メロディに入るといきなりデパートのBGMっぽい。また、ジョビン自身、プレイヤーとして特に優れた人でもないから、「イージーリスニング」の殻を破れない。やはりジョビンの曲はブラジルのアーティストが歌ってこそ奇跡が起こるのだなと実感。 (5/9/04)

[追記]iTS USはパーシャルアルバム扱いだけど全曲揃ってます。(6/27/06)