National Health ★★★★

National Health

National Health / National Health

::★★★★::1977::Charly::pop::rock::
iTS US / iTS JP(→iTSについて

ジャズロック強化月間(強化というより入門なんだけど)と自分の心の中で銘うっていたときに買った一枚。ナショナル・ヘルスというのは、ビル・ブラフォードの80年代のソロ作に多く参加していたキーボード・プレイヤー、デイヴ・スチュワートユーリズミックスの人とは別人)が70年代後半に組んでいたプログレ・ジャズロック・バンドで、メンバーは、スチュワートの他、フィル・ミラー(g)、ピップ・パイル(ds)のハットフィールド&ザ・ノース組、それにのちにホワイトスネークに入るニール・マレイ(b)。ということで、カンタベリー系ということになる‥ようです。スチュワートはハットフィールド&ザ・ノースのメンバーが多くなりすぎる(スチュワート自身がハットフィールド&ザ・ノース出身)のを懸念して、ドラムは最初ビル・ブラフォードにやってもらう予定だったそうで、録音もしているのですが、おりしもプログレ冬の時代でメンバー探しやレコード会社探しにも苦労し、そうこうしているうちに多忙なブラフォードが抜けてしまい、結局やはりハットフィールド&ザ・ノースのドラマーのピップ・パイルに頼ることになったという顛末があるらしい。けど、こんなエラそうに解説しているぼくがハットフィールド&ザ・ノースを聴いてないんだけど。(おい)

それはともかく。ナショナル・ヘルスって微妙な位置にいるバンドで、いわゆるハードコアなプログレファンに熱狂的に支持されるほど荘厳や叙情性や変則性はなく、しかもちゃんとしたボーカリストがいないので、わりにストレートな即興中心のジャズロックなんですが、かといってジャズファンやフュージョンファンにとってはあまりにプログレっぽすぎる。で、ぼくも最初、「うげっ、こりゃだめだ、合わねー」と思ったんですよね。曲のタイトルからして「Tenemos Roads」「Brujo」「Borogoves」とか、ああ、プログレだー!という感じだし。一曲目からファルセットのソプラノ女声ボーカルとかでてくるし。AMGに「ナショナルヘルスは70年代プログレバンドの中で、今聴いてもそれほど古くさくない珍しいバンドだ」とか書いてたけど、おいおいどこがじゃ、めちゃ古くさいやんけ!という感じです。特にドラムとギターの音がねー。ドラムの音はわりにショボいし、あと、こもったディストーションギターの演奏が実に古くさい。

しかし、何回も何回も聴いているうちにだんだん好きになってくるのですから不思議です。ファルセット女声ボーカルも、オペラチックではなく、どちらかというと北ヨーロッパトラデショナル系だからさっぱりしてるし、わりに淡々としたバンドの演奏に美しい彩をそえています。あとやっぱりインストで即興中心ですからね。構成のキバツさよりも演奏で聴かせるグループだというのも良いです。しょぼいと思ったドラムの音も、なんだかこれはこれで味だという気がしてくるのが不思議です。一曲目の「Tenemos Roads」のイントロのドラムの、アンティークな人力機械のようなほこりっぽい響きとか、良いですねー。ホワイトスネイクには全然合ってないニール・マレイのベースも良いです。個人的にはこの曲が一番好き。フィル・ミラーのギターはやっぱり重苦しくてちょっと微妙ですが‥。デイブ・スチュワートのキーボードは良いです。全体に、ブラフォードの70年代後半から80年代にかけてのソロの曲にもうちょっとヨーロッパ情緒を加えて素朴にした感じです。ということでけっこうお気に入り。 (6/3/03)

[追記1/2/2007]このアルバムはiTS JPで600円、iTS USで3ドル99という激安価格! なんかくやしい…。