Ahead Of Their Time ★★★★

Ahead of Their Time

Frank Zappa / Ahead Of Their Time

::★★★★::1993a::Rykodisc::pop::rock::
iTMS US

(zappa catalog #61)

1993年に発掘盤としてだされたオリジナル・マザーズのライヴ。1968年にロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで録音されたもの。ザッパは室内楽団のための曲をツアー中のホテルで書きためていたそうなのですが、このロンドンのショーの前座をどうするかときかれたとき、ザッパは前座より、BBCシンフォニーのメンバー14人を雇ってこれらの室内楽の曲を演奏しようと決めたのがきっかけだそうです(ザッパ本人のライナーより)。で、一度きりということで、録音とあいなったそうです。ザッパはこの企画のために7000ドルも私費を投じたそうです。この企画からアルバムが生まれることも期待していたようですが、ツアー中の急な計画でリハーサルも十分でなかったし、当時の録音技術もいまひとつだったため、アルバム製作は実現せず、音源の一部が「いたち野郎」でつかわれたにとどまったそうです。本アルバムは、その録音がオーバーダビングなしで収録されています。

で、出来ですが、確かに音質は最高とはいえないし、また、前半の小劇は、リハ不足のため、よれよれ‥って、そこがいい味を出しているんですが、まあ、「きちんとしたアルバム」をつくるには少々不完全なクォリティーだという印象はぬぐえません。でも、ちょっとした欠点をのぞくと、演奏は見るべきものも多いし、あからさまな演奏のミスなどもなく、きちんとしてます。なによりも、のちにザッパのキャリアで展開されていく現代音楽的楽曲の雛型が、かなりきっちりした形でここで散見されるのがききどころ。いきなりオール現代音楽というのも抵抗が大きいだろうからと、喜劇をからめておふざけの風味を加えているのがエンタテイナーのザッパらしいこころくばりです。

全体に「原石」っぽい内容ながら、かなり聴きごたえがあるものとなってます。 (9/16/02)