Even So ★★★★★

Even So

Bonnie Pink / Even So

::★★★★★::2004::Warner Music Japan::pop::rock::jp::
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■ 前作をしのぐ勢いの傑作

7枚目のアルバム。久々のトーレ・ヨハンソンのフル・プロデュース。

このアルバムは前作とともに、ボニー・ピンクの最高傑作だと言えるでしょう。基本的には前作の延長線上なんですが、どちらが上かと言うと…オレは僅差でこのアルバムの方が上じゃないかと思います。

前作で「内向性・洋楽志向」の呪縛を打ち破り、より自由なJ-Pop的アプローチを打ち出したボニー・ピンクですが、本作もJ-Pop的です。つまり、より商業的に成功しやすい音ですが、商業的だからと言ってクォリティーが低いとは限りません。前作同様、曲・メロディー・歌唱、どれを取ってもボニー・ピンクのキャリアで最高の水準だと言えるでしょう。

また、4枚目「Let Go」、5枚目「Just A Girl」ではアルバム1曲目〜前半に印象深い曲が少ないことにオレは不満を持っていましたが、前作(「Tonight, the Night」)、今作(「Private Laughter」)と非常にパンチの聴いた素晴らしい楽曲で幕を開けるのもアルバムの印象を良くしています。

素晴らしいアルバムです。ついでにジャケ写も超カワいい。ちょっと本人の実際の雰囲気と違う気もするけど。(9/1/2007)


この曲を聴け!

  • 冒頭の「Private Laughter」(シングルカット)は良いですね。何が良いかと言うと、冒頭の「頑なにつぶった目をあっさりとほどいた魅惑の言葉」というところから、低めの音域で、ドスの効いた歌唱が展開されるという、ファースト・インプレッションが鮮烈なのが良いですね。ドスが効いたといっても、最初期のような無理な発声ではなく、自然な発声で、かつ、力強いんですね。歌というのは高音をはりあげるのは誰でもできるのであって、低音をしっかり歌えることの方が重要なわけです。
  • もう一曲のシングルtr9「Last Kiss」は、非常にキャッチーなパワーバラード(サビの盛り上がりでハードなギターやストリングスで盛り上げるバラード)で、ついにボニピンもパワーバラードにまで手を染めたかとハードコアな初期のファンなら眉をひそめそうなところですが、この曲が非常に良くできているのですよ。構成はこれでもかというほどシンプルで、メロディも覚えやすく、サビの盛り上がりも嫌みなく、「痩せた指にキスをしたあなたをずっと忘れないよ」というくだりにはほろりとしてしまいます。このサビでは、「忘れないよぉぉぉぉぉ〜〜〜」というようなJ-Popでありがちな暑苦しい歌い上げをせず、音を必要以上に伸ばさずに切り、余韻を残す歌唱なのがまた良いです。
  • その他では、清々しくフォーキーなtr2「Ocean」、ポップでひたすらキャッチーなtr3「New Dawn」とtr4「5 More Minutes」あたりが良いです。そう、もう「前半はもひとつだけど後半にかけて意外に良いんだよねえ」とは言わせない。前半にきっちりと良曲が固めてあるのが前作と今作の強みです。