Lap Of Luxury ★★★

Lap of Luxury

Cheap Trick / Lap Of Luxury

::★★★::1988::Epic::pop::rock::
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■ レコード会社に押し付けられた「永遠の愛の炎」がまぐれで大ヒットしてしまったが低調さは相変わらず

10作目のスタジオアルバム。オレ的には「もっともチープ・トリックらしくないアルバム」ナンバーワンです。

すでに死に体になってしまったチープ・トリック。レコード会社の言うがままに他のソングライターが作ったあからさまな商業主義的AORバラード「The Flame」(邦題「永遠の愛の炎」)やら、プレスリーのカバー「Don't Be Cruel」やらを録音してアルバムを制作するのですが、なんとこの「The Flame」が大ヒット。全盛期にもありえなかった全米ナンバーワンを達成してしまいました。「Don't Be Cruel」も4位を記録。すごいぞチープ・トリック!

しかし、チープ・トリックはまだ復活していませんでした。そもそも「The Flame」自体、メンバーが嫌で嫌でしょうがなかったのを、売れていない弱みからしょうがなく録音したもの。それが大ヒットしてしまうのだから、メンバーにしてみれば「じゃ、今までのオレたちは何だったわけ? いったい何が良くて何が悪いわけ? もうわけわからんわ」てな状態だったことでしょう。

実際、このアルバムからオリジナルメンバーのトム・ピーターソン(b)が復帰するんですが、ジャック・ブルースばりのぶっといなベースプレイが身上のピーターソンが帰ってきたことがアルバムのサウンドにまっっっっったく反映されていません。そこにはレコード会社の言うままに操り人形のように演奏するチープ・トリックの姿しかなかったのです。なんといっても、外部の人との共作ばかりでチープ・トリックのメンバーだけで作られた曲がtr5「Never Had A Lot To Lose」の1曲しかないという惨状。しかもこれは主力のニールセンじゃなくてピーターソン&ザンダーの曲だし。サウンドもキーボードがかなりフィーチャーされていて(しかも「Standing On The Edge」で聴かれたようなニューウェーブ的なキーボードじゃなくて、AORロック的なキーボード)、チープ・トリック=ギターロックという構図から大きく離れています。てゆうか、チープ・トリックのアルバムと言うより、ロビン・ザンダーのソロアルバムって感じ?

全米ナンバーワンなどという華々しいチャートアクションと、80年代丸出しのAORロックサウンドの派手さとは裏腹に、ますます混迷を深めるチープ・トリックでありました。(3/15/2007)