Blow By Blow ★★★★

Blow By Blow

Jeff Beck / Blow By Blow

::★★★★::1975::Epic::pop::rock::jazz::
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■ あっと驚く、オール・インストのジャズ・ロック・アルバム

第2期ジェフ・ベック・グループが今いち不完全燃焼。次に、デリカシーなさそうなドカドカドラマー、カーマイン・アピスとベック・ボガート&アピスを組んでライブアルバムを出したものの、スタジオ盤1枚であっさり解散。そんな気まぐれなベックが出した、一世一代の、メガトン級の気まぐれがこの「Blow By Blow」と「Wired」でありました。

なんといってもいきなりボーカルいなくなって、すべてインストで、ジャズ・ロックやるんだもんね。しかもそれが大当たりの高品質だったものだから、当時リアルタイムで聴いた人は驚いたでしょうね。というか、とまどっただろうなあ。

で、本作「Blow By Blow」と次作「Wired」、甲乙つけがたい作品とされています。一言で言えば、本作はマックス・ミドルトン印、次作はヤン・ハマー印という感じでしょうか。一般には本作「Blow By Blow」の方が「より名盤」だとされています。確かに、「Wired」はあまりにフュージョンな領域に入りすぎたかもしれない。ただ、オレ個人は、「Wired」に先に触れたせいか、「Blow By Blow」はそれほど大好きってほどでもないんだよねえ。

こうやって改めて聴くと、このアルバムはずばり、スティービー・ワンダー色が強いですね。tr6「Cause We've Ended As Lovers」とtr7「Thelonius」という2曲のワンダー曲が入っているだけでなく、全体にテイストがスティービー・ワンダーっぽいのね。ジェフ・ベックスティービー・ワンダーの「Talking Book」(1972)に参加しているし、第2期ジェフ・ベック・グループのベック自身のオリジナルはけっこうスティービー・ワンダーっぽいテイストがあったし、影響を受けていたことは想像に難くありません。

そして、何より本作「Blow By Blow」では、マックス・ミドルトン(第2期ジェフ・ベック・ブループのキーボードプレイヤー)のプレイが当時のスティービー・ワンダーっぽいことに起因しているのでしょう。エレピの響きもワンダーっぽいところがあるけれども、耳を引くのは、ファンキーなクラビネットのふがふがしたプレイです。当時スティービー・ワンダークラビネットに執心で、ヒット曲「Superstition」(1972)を初めとするクラビネット・ファンクを好んで発表していたけれど、このジェフ・ベックの「Blow By Blow」でも、tr1「You Know What I Mean」、tr3「Constipated Duck」、そしてスティービー・ワンダー作のtr7「Thelonius」と、クラビネット・ファンクの存在感が大きい。

ラストのtr9「Diamond Dust」なんかも、スティービー・ワンダーが歌をつけたらぴったりという感じの曲だし。この曲のミドルトンのエレピ、ムーグも当時のワンダーっぽいね。

ただ、個人的には、クラビネット・ファンクはそれほど好物じゃないので、それであまり思い入れがわかないのかもしれません。ただ、冒頭のtr1「You Know What I Mean」、プログレ風味のtr5「Scatterbrain」、そしてtr8「Freeway Jam」の3曲のグルーヴィーチューンは本当にかっこいい。ロック・インストの最高峰と言えるでしょう。ハイ。(3/6/07)