Jeff ★★★★

ジェフ

Jeff Beck / Jeff

::★★★★::2003::Epic::pop::rock::
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■ 引き続きエレクトロニカだが少し有機路線に揺り戻し成熟さえ感じさせる新しいギターロックアルバム

1999年の復帰以降、良いペースでアルバムをリリースしているジェフ・ベックエレクトロニカ路線第3弾です。第1弾「Who Else!」では旧知のトニー・ハイマスがプロデュースして穏健なエレクトロニカ、第2弾「You Had It Coming」ではアンディ・ライトがプロデュースして前衛的エレクトロニカへ飛びましたが、本作は、アンディ・ライト、デイヴィッド・トーン(Splattercell)、ディーン・ガルシア(Curve)、アポロ440、トニー・ハイマスなど、多くのプロデューサーを迎えており、内容的にもちょうど「Who Else」と「You Had It Coming」の間ぐらいの作品となっています。つまり、サウンドは「Who Else」より新しいけれども、ギタープレイは、カットアップが中心だった「You Had It Coming」よりストレートにフィーチャーされています。

サウンドプロダクション別では、ジェフ・ベックはデイヴィッド・トーンを高く評価しているようです。デイヴィッド・トーンは他の人選と違い、リミックスのためにポストプロダクション段階で採用された人らしく、例えば、グラミー賞を取った(←グラミー賞なんてほとんど意味ないけどね)tr2「Plan B」は、ここでのインタビューによれば、元々は「ZZ Topみたいな曲だった」のをトーンがギターだけ残して解体し、まったく違う曲に作り替えたそうです。トーンがリミックスした曲では、tr8「Line Dance With Monkeys」の抑えた響きも非常に良いです。

前作の功労者、アンディ・ライトのプロデュース曲では、「声が伝えないならギターが伝えるわよ!」というフレーズが繰り返されるtr3「Pork-U-Pine」のアラビア風のハードなギターのメロディ、そして、tr5「Trouble Man」でタブラのビートに煽られるように燃えるベックの激しいギターソロが耳に残ります。tr11「My Thing」で聴けるジェームズ・ブラウンみたいなベックのギターのカッティングにもしびれてしまいます。

アポロ440(「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」のテーマ曲をやったユニット)の曲では「Hot Rod Honeymoon」が良いねえ。アポロ440らしい大味なビートが、この「フェイク・ビーチ・ボーイズ」な雰囲気にぴったり。そしてベックのギターが最高にファンキーでカッコいい。ファットボーイ・スリム風味の曲です。

ディーン・ガルシア(Curve)の曲では、アグレッシブな冒頭tr1「So What」も良いけれども、ジャジーでブルージーなtr9「Jb's Blues」が、オールド・ベックの作風を色濃く残していて好ましい。

そして、ラストは、ブルガリアン・ヴォイスをオーケストラ+ギターで独自に解釈したtr12「Bulgaria」、そして、ノンストップで同じくオーケストラをバックにした「Why Lord Oh Why?」で耽美的に締め。これらはトニー・ハイマスのプロデュースで、またトニー・ハイマスの株が上がりました。

ということで、同じ路線の3作目ということですでに「衝撃」はありませんが、着実にクォリティーを上げていて、オッサンすごいです。てゆうか、このアルバム聴いて、このアーティストがまさか59歳だとは誰も思うまい。(3/6/07)