Mad Dogs And English Men ★★★★★

Mad Dogs & Englishmen

Joe Cocker / Mad Dogs And English Men

::★★★★★::1970::A&M::pop::rock::
iTS US / iTS JP(→iTSについて

■ レオン・ラッセル指揮の壮大な酔いどれスワンプ・ロック・エンタテイメント・ショー

イギリスの酔いどれパブ・ロック・シンガー、ジョー・コッカーの有名なライブ盤なんですけど、ジョー・コッカーのアルバムである以上にレオン・ラッセルの「作品」でもあることはよく知られています。このころすでにラッセルの「デルタ・レイディ」をカバーしてヒットさせていたコッカーですが、音楽の総指揮自体、ラッセルがとりしきっていたわけです。で、その集大成が総指揮ラッセル、唄コッカーの「マッド・ドッグズ&イングリッシュ・メン」ツアー。当時のラッセルは、翌年の自身のアルバム「レオン・ラッセル&ザ・シェルター・ピープル」や、有名なジョージ・ハリスンの「コンサート・フォー・バングラディッシュ」でも見られるように、ファミリー的大所帯バックバンド、バックコーラスをバックに、泥臭くゴスペル的グルーブの海に身をゆだねつつ、鋭い眼光で総てをコントロールするというスタイルを追及しており、このジョー・コッカーのアルバムも、リードボーカルは(ごく一部を除き)コッカーに任せてはいるけれども、まごうことなき「ラッセル印」が貫かれているわけです。

とはいえ、ジャケの存在感から分かる通り、「操り人形」にしてはコッカーは破天荒なボーカリストであり、ちゃんと「コッカーのアルバム」としても機能しています。アルコールの問題でも知られるコッカーですが、このアルバムでも、このオッサン酔っぱらってんのとちゃうかといった感じの、ちょうど良い加減のだらしなさをもって、例のしゃがれ声でシャウトしています。その「酔っぱらいグルーブ」を支えているのが、総勢20人を超える豪快なバックバンド。このぜいたくな「ブルーズ・ロックンロール・ショー」は70年代ならではというか、80年代以降は絶対ありえない世界ですね。個々の演奏がどうとか言うより、ジャムセッションすれすれのゆるやかな混沌。また、特に耳を惹くのが、リタ・クーリッジを含むラウドなコーラス陣で、このゴスペル・グルーヴあってこそのコッカーの酔いどれボーカルも映えるというもの。しかし、すべての上に君臨するような、レオン・ラッセルの「All right!」というかけ声が実は一番カッコよかったりします‥。

曲は、カバーが多いのですが、バンドとボーカルの個性が際立っているので、どの曲もコッカー&ラッセル印が刻印されていて聴きごたえがあります。好きなのは、12分を超える、ゆっる〜い酔っぱらいメドレーtr11「Blue Medley」の、特にサム&デイブの「When Something Is Wrong With My Baby」が好き。他はレイ・チャールズのtr10「Let's Go Get Stoned」、ビートルズのtr16「She Came In Through The Bathroom Window」、あとtr5「Cry Me A River」、tr17「Space Captain」などが好き。全部カバーなんですけどね。いいんです、酔っぱらいの大ロックンロール・カラオケ大会の名作なんだから。

湯気立つような傑作ライブ盤。 (2/15/07)

[追記 2/15/07]iTS USのは1曲欠けのパーシャルアルバム。曲数が多い(全19曲)のでちょっと高くつくので買う価値なし。iTS JPのは全曲揃って1500円なのでリーズナブル…だけどアマゾンのCDの方が安いです(送料無料にすれば)。

[追記3/16/07]星勘定を★★★★★に変更