MSG ★★★★★

神話

Michael Schenker Group / MSG

::★★★★★::1981::Chrysalis::pop::rock::
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■ オレ的最高傑作 「代表曲」と呼べる曲がないのが残念

MSGのセカンド。助っ人セッションミュージシャンで録音された前作と違い、ベースにその後長い付き合いになるクリス・グレン、ドラムにさすらいのドラマー、コージー・パウエル、キーボード&サイドギターにUFO時代の盟友、ポール・レイモンドを迎えた本作は「バンド」としての一体感があります。MSGの「全盛期」であるのは間違いなく、このメンバーが黄金メンバーだというのは異論がないでしょう。長続きしなかったのが不思議なぐらい。

で、なぜか好きなんですよね。なぜだろう。ヘヴィーメタルが好きだったリアル厨房のときにリアルタイムで聴いたときは特に好きってほどでもなかったんだけど。なんつうか、やっぱり渋いアルバムなんだろうな。ぼくは今はメタル野郎でもないわけで、昔のハードロックを聴くときの基準として、「今聴いて新鮮かどうか」ということがあり、そういう観点では昔のキッスとかモントローズのファーストとかは文句なしでカッコ良いのだけれど、このMSGのアルバムは微妙。そこはかとないヨーロピアン叙情がね、キワドイのであります。ハードロックに限らず、昔のロックというのはバカバカしいシロモノほど現代性を保っているわけで(たとえばT-Rexとかブラックサバスとか)、叙情性が混入するとキケン。

それでも、このMSGのセカンドアルバムは許せてしまう。それは一つには音のせいかなと思う。プロデュースはUFOでおなじみのロン・ネヴィソンなんですが、このアルバムはマイケル・シェンカーの作品の中で一番ギターの音が良いアルバムではないかと思う(って、全部聴いてるわけじゃないくせに‥)。シェンカーといえば、ヨーロピアン叙情のあるギタリストなんだけど、同時になんというかブギー魂というのを強烈に持っているんだよね。それは短髪の金髪をピンピンに立てたルックスにも共通しているんだけど、ベトベトしてない。乾いたファズギター。でもどこかくぐもっていて、そこに叙情がにじみ出ている。メロドラマチックになることなくメロウになれるギタリストなのであり、そのマイケル・シェンカーの魅力を堪能できるのがこのアルバムなのです。

曲についていえば、このアルバムは「これはハードロックの名曲だ」という曲は全然なくて、地味な曲ばかりで、それが唯一の欠点なのだけれども、逆に、ハズレ曲も一曲もなし。ゲイリー・バーデンのB級っぽいボーカルも良いし、コージー・パウエルのワンパターン・ドラムもぴったりはまっている。何回聴いても飽きない不思議な名盤。

ていうか、MSGってこのセカンドとファーストだけで、他は大したアルバムないのよね。ヨーロッパ的ファーストよりアメリカンなこのセカンドの方が圧倒的に好き。 (5/29/03)