Let's Get It On ★★★★★

Let's Get It on

Marvin Gaye / Let's Get It On

::★★★★★::1973::Motown::soul::r&b::
iTMS US(デラックス) / iTMS US / iTMS J(ボーナストラック) / iTMS J(ボーナストラックなし)

「What's Going On」と並ぶマーヴィンの代表アルバム。70年代のマーヴィンは、メッセージ色のつよいアルバム「What's Going On」を例外として、基本的に性愛を歌い続けたのですが、その第一弾とも言えるのがこのアルバムで、全編愛の歌、あるいはセックスの歌。「What's Going On」の成功による精神的な好調さもさることながら、当時はのちに妻となるジャンと出会った頃で、そのポジティヴな悦びが満ちています。そのせいで、のちの「I Want You」に代表されるようなダークな官能路線というよりも、とても明るくカラッとした感じ。ジャケットのマーヴィンも実に明るくて力強い。

全体としてもオーソドックスなR&B調で、70年代の新しいマーヴィンの音楽性の中に60年代の持ち味が戻ったかのようで、ソウルファンにも非常に好まれている作品です。静かな唱法からワイルドなシャウトまで両端を自由に行き来する(ヴォーカル多重録音)「Let's Get It On」はやはり特別。イントロ部にマジックがあります。5曲目「Come Get To This」とならぶこのアルバムのハイライトでしょう。翌年のライブ・ヴァージョンがあまりに有名なためあまり見向きされない「Distant Lover」のスタジオ・ヴァージョンも、メリハリという点ではライヴに劣りますが、マーヴィンの丁寧な歌がしみいる好バラード。「官能路線」のはしりである「You Sure Love To Ball」も実はかなりいい曲で、のちのアイズリーズを思わせるような曲であります。

ラストのスロー「Just Keep Satisfied」は、モータウン首領ベリー・ゴーディーの妹で当時の妻だったアンナ・ゴーディ・ゲイに対する「離婚宣言」。こんなプライベートな曲をいきなりいれてしまうところにマーヴィンの無邪気さが垣間見れます。離婚裁判が泥沼化することも知らずに‥。

なお、アルバム「Trouble Man」「Let's Get It On」「I Want You」に未発表曲集CDをつけた4枚組セット「Classics Collection」というのが出ています(注:2002年現在は入手困難かも。ただし、2001年に2枚組の「Let's Get It On」が出ています)が、これはお勧め。ミックスも太くなってよりよくなっている、全曲歌詞がついてる、参加ミュージシャン一覧がついてる、ライナーがついている、などのパッケージ面での充実が充実してるうえ、この「Let's Get It On」収録の「If I Should Die Tonight」は、オリジナルにはなかった一節が加えられており、ファンには絶対みのがせないところです。 (4/7/02)