フランク・ザッパ:フロ&エディ期について(→<a href="/ghostlawns/searchdiary?word=%2a%5bZappa%2c%20Frank%20%2f%20intro%5d" >Zappa Top</a>)

Frank Zappa: (2) The Flo & Eddie Era

フロ&エディ期
(1970-1972 by the album release years)

【笑劇のフロ&エディ】


オリジナル・マザーズでやるべきことは終わった・・と感じたのか、オリジナル・マザーズをあっさり解散してしまったザッパ。イアン・アンダーウッドとドン・プレストンをのぞいてまったく新しいメンバーで活動を開始します。また、ここから、「ザッパのソロ名義」と「マザーズ名義」の違いは実質的になくなると言えます‥が、この時期はまだ「マザーズ」を名乗ってますね。

では新しいマザーズの特徴はなんだったのかといえば、それは、フロレセント・リーチ&エディー(通称フロ&エディ)というボーカリスト・コンビ(aka マーク・ヴォルマンとハワード・ケイラン)をフロントにたてた、セリフ劇風のコミカルなステージングにありました。内容的には、ロック・バンドのロード・ツアー、それにまつわる狂気とドタバタを笑いと不条理の中で描いた物が多いようです。その頂点といえるのが映画「200モーテルズ」とそのサントラであり、それを囲うようにして他に3枚のアルバムが発表されました。

音楽的には、変則的だったオリジナル・マザーズとはうってかわって、ストレートなロックサウンドになっています。これは、ひとつには、「昔からの仲間やそのへんの友達の集合体」だったオリジナル・マザーズと違って、プロフェッショナルな技術をもったミュージシャン(エインズリー・ダンバーやジョージ・デューク)がバンドの中心になったことの影響があるでしょう。また、この時期はホーンセクションがバンドにいなかった(ジョージ・デュークやイアン・アンダーウッドが必要に応じてトロンボーンなどを演奏したりはしましたが)というのも関係して、サウンド的にはシンプルなロックバンド・サウンドになっています。

この時期は、最初のアルバム「チャンガの復讐」をのぞくと、とにかく英語のセリフが多いので、少々日本人にはとっつきにくいのが難しいところです。それでも、ザッパの念願の映画「200モーテルズ」では、ザッパの本格的な現代音楽へのアプローチと、チープなロックンロールが融合した注目盤だし、また、この時期に初のフル・ライブ・アルバムが発売されたこともみのがせないでしょうね。個人的には、エインズリー・ダンバーのパワフルなドラムプレイが好きです。

【おもなメンバー】


前述したように、この時期はオーソドックスなロック・バンド編成でした。

  • ドラム‥‥この時期のマザーズで一番カッチョよかったミュージシャンは、なんといってもドラマーのエインズリー・ダンバー(Aynsley Dunber、全作品)でしょう。ジョン・メイヨールやジェフ・ベックなどの大物の作品にすでに参加していた彼ですが、そのツーバスを効果的につかったプレイは非常にロッキッシュなダイナミズムを持つと同時に、16ビートのリズムのセンスが良く、豪快ななかにビシビシとシンコペーションを決めてくれたものです。ジョン・ボーナムに似たところもあるといえるかもしれませんが、もうちょっと軽やかな感じかな。ジャズのトニー・ウィリアムズの影響も少し感じられます。とにかく、新生マザーズ最初のアルバム「チャンガの復讐」の冒頭の「トランシルヴァニア・ブギー」で、最初からエンジン全開でぶっとばすエインズリーの16ビートは激カッコいい。もちろん、この曲だけでなく、どんな曲でも持ち前のリズムセンスの良さを感じさせてくれる好ドラマーです。ちなみに、マザーズ後の主な経歴は、ジャーニーのオリジナルメンバー、ジェファースン・スターシップへの一時参加、ホワイトスネイクのアメリカ進出のきっかけとなったアルバム「サーペンス・アルバス」への参加などです。
  • ベース‥‥「チャンガの復讐」の段階では、「Hot Rats」に参加していたマックス・ベネット(Max Bennet)の名まえがみえます。次がジェフ・シモンズ (Jeff Simmons) ですが、ザッパがジェフをモデルに、「200 Motels」用に、「ザッパのお笑い音楽に嫌気がさしてやめてしまうベーシスト」という脚本を書いていたら本当にやめてしまったという。次が、「ヘイ・ジョー」を最初にレコーディングしてヒットさせたグループ、ザ・リーヴズのベーシストだったジム・ポンズ(Jim Pons、#12, 13, 14, 57)。
  • キーボード‥‥イアン・アンダーウッド(Ian Underwood、全作)とドン・プレストン(Don Preston、#12, 14, 57)の、オリジナル・マザーズ生き残りが参加してますが、存在感としては、アンダーウッドの存在感はあまりない気がします。ドン・プレストンの印象は強いですね。あと、70年代中ごろのザッパバンドで重要な役割をはたすジョージ・デューク(#11, 13)がはじめて参加しています。
  • ヴォーカル‥‥フロレセント・リーチ&エディ(ことマーク・ヴォルマン&ハワード・ケイラン)(Phlorescent Leech and Eddie/Flo&Eddie; Mark Volman, Howard Kaylan、全作)が中心。このこともあって、ザッパはめずらしくあんまりヴォーカルとってません。ちなみに、フロ&エディーは、「ハッピー・トゥゲザー」のヒットで知られるタートルズのヴォーカリストでした。ちょい役では「200モーテルズ」(#13)で、オリジナル・マザーズのドラマーだったジミー・カール・ブラック(Jimmy Carl Black)が田舎くさい歌を披露しているのがうれしいところ。

(初稿:10/24/1996、最終改訂:9/20/2002)