Tightening Up: The Best Of Archie Bell And The Drells ★★★★★

Best of-Tightening It Up

Archie Bell And The Drells / Tightening Up: The Best Of Archie Bell And The Drells

::★★★★★::1994::Rhino::pop::soul::r&b::
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一時めっちゃ愛聴したアルバム。とにかくキャッチーで楽しい。このベスト盤は、曲がほぼ年代順にならんでいて、Ovide、Atlantic、Glades、TSOP、Philadelphia International とレーベルを点々としたこのグループを時代を追って展望できるのがよいです。はっきりいってほぼ全曲いい!! さすが再発ベスト盤の王者ライノ、良い仕事してます。どれもアーチーたちのどこか甘酸っぱいポップなメロディ感覚に満ちています。また、コーラス・グループの粋というものも十二分に味わえます。リードが自由に歌い、コーラスがそれをさりげなくサポートする、この絶妙な呼吸がたまりません。

まず、オープニングはもちろん、ナンバーワンヒットのtr1「Tighten Up」(1967)。YMOもカバーしたこの曲ですが、ベースのファンキーな雰囲気、ギターのカッティングがとにかくかっこいいポップな曲。グルーヴをあおるように重ねられるホーン、オルガンも楽しい。歌はあってないようなものなので、コーラス・グループとしてのアーチー・ベルズ&ドレルズの良さを実感するわけにはいきませんが、末代まで語り継がれる名パーティー・ソングであるのは間違いありあせん。続くtr2「I Can't Stop Dancing」、tr3「Do The Choo Choo」はともに「Tighten Up」のあからさまな二番煎じで(ともにギャンブル&ハフ作品、1968年)、その安易な発想に笑ってしまいますが、「Tighten Up」と違って、ヴォーカルがフィーチャーされており、アーチーの下町のあんちゃん的ヴォーカル、曲のポップさを加速させるテナー系コーラスと、アーチー・ベル&ドレルズの魅力を楽しむことができます。どっちもいい曲。

その後、アーチーたちは本格的にフィラデルフィアに移り、フィリー・ソウルの創生に参画します。ニューヨーク・ドールズもカバーした(←どういう選曲だ)tr5「(There's Gonna Be A) Showdown」(1968)は、フィリー初期らしい、シンプルさとポップさを兼ねそなえた佳曲で、歌も良いです。初期フィリーの曲って、のちのフィリーソウルの過剰なまでの華美さがない分、素朴な味わいがあります。録音もモノラルだし。瑞々しい躍動感とポップさに満ちています。このあたりがアーチーたちのもっとも良い時期かも知れません。

tr9〜13は、アルバム化されてないシングルで、レーベルをTSOP/Phil Intに移行する前のエア・ポケットみたいな時期。で、これらの曲がすべて良いんですよねえ。tr9「A World Without Music」、tr10「Don't Let The Music Slip Away」あたりは、その前の時期の延長線上的。どちらも良いのですが、個人的には後者のコーラス部分に弱いんです。とくに「Don't let the music slip away, Don't let it slip away now baby, Don't let the music slip away」と歌われるコーラスで最後にファルセットになるところがいいのよねえ。グッときます。tr11「Wrap It Up」はサム&デイヴのカバーですが、オリジナルとは違う、コーラス・グループらしい味わいがあってとても好き。

tr14以降(1975〜)は、ベタベタのフィリーというサウンドが続きます。とはいえ、アーチーは技術的にどうというボーカリストでもないので、バラードよりダンサー系で攻めます。人間の出来が浅いため、じっくり味わうバラードよりイケイケな曲の方が好きなぼく向きだね。tr14「I Could Dance All Night」なんか、アーチーたちのポップな持ち味が上手い具合にフィリーの豊潤な音に融合していて、すごく好き。でも一番好きなのは、オージェイズの「I Love Music」激似の tr17「Everybody Have A Good Time」(バニー・シグラー作品)。オリジナリティーはないがとにかくイケイケで、ナイス! フィラデルフィア・インターナショナル下の70年代のアーチーたちは、オージェイズやハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツなど、よりボーカルの力のあるグループの影にあって、バッタもんみたいな曲しか回してもらえなかったということなのかもしれないけど、そんなB級っぽさも味にできるのがアーチーたちの良さです。

そんなすばらしい作品。 (7/20/04)