Stain ★★★★

Stain

Living Colour / Stain

::★★★★::1993::Epic::pop::rock::
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ヴァーノン・リード(g)率いる「ブラック・ロック」の代表選手のひとつ、リヴィング・カラーの三作目にしてラスト・アルバム。AMGは、現時点では、リヴィング・カラーのデビュー作を最も高く評価し、二作目、三作目とサウンドがヘヴィーになるにつれて不当に思えるほど評価を低くしているけど、ぼくの見方は違っていて、確かにリヴィング・カラーはデビュー作がもっとも歴史的意義が高いのはその通りで代表作と考えるのにはやぶさかではないけれども、一番時代を感じさせる作品でもあるのも確かだと思うんだよね。おもいっきり「ファンク・メタル」「ミクスチャー・ロック」な作品だから。それに対して、二作目「Time's Up」と三作目してラストアルバムである「Stain」はよりアプローチが知的になり、今聴いても古くない。特にリヴィング・カラーのアルバムで特異なほどヘヴィーでダークな本作「Stain」は、ロン・セイント・ジャーメインによるタイトな音像もあいまって、10年前の作品であることを感じさせない。まあ、ほとんどスラッシュ・メタルな世界なのでヘヴィーメタルがダメな人はダメかもしれないけど。冒頭のtr1「Go Away」からして、ほとんどメタリカメガデスかという世界だし。ただ、ギターのオーバーダビングを基本的にはしない、つまり、音を塗りこめるより音の隙間を残して生の演奏の感覚を大切にするブラック・ロックの基本的姿勢は維持されています。ギターソロのバックでもバッキング・ギターをオーバーダビングしないので、ギターソロの裏はドラムとベースのみとなり、音が薄くなるわけですが、それを良しとするところに緊迫感が生まれるのがブラック・ロックの良さ。ヴァーノン・リードのギターも、いつも以上にハードに、そして伸びやかに鳴ってます。

もう一つ、ベーシストがこのアルバムではダグ・ウィンビッシュに交代しているのも聴きどころ。AMGではダグ・ウィンビッシュは「ミック・ジャガーやマドンナやジェフ・ベックなどと共演しているベテラン・スタジオ・ミュージシャン」と説明されていますが、いや、そりゃ事実ですが、ウィンビシュは大物ミュージシャンと仕事するだけの職人ベーシストじゃない。ウィンビッシュといえば、シュガーヒル・ギャングのバックバンドに始まり、実験的バンド、タックヘッドの創始者でもあり、また、イギリスの前衛ダブ・アーティスト、エイドリアン・シャーウッドと数多くのコラボレーションをし、元ポップ・グループマーク・スチュワートの代表作のサウンドの中核を形づくり、ボム・ザ・ベースあたりとも仕事のある、非常に実験精神あふれるミュージシャンでもあるわけです。本アルバムでは、そのウィンビッシュの異能ぶりがいかんなく発揮されてます。全体的にはスラッシュメタルっぽいハードロック・サウンドなのに、ウィンビッシュのベースはあくまで親指チョッパーで、その異色ともいえるとりあわせがこのアルバムのサウンドを特異なものにしています。バカテクだし。

というわけで、ヘヴィすぎるという欠点はあるけれども、聴きどころ満載の好ハードロック・アルバム。 (10/30/03)