Journey With The Lonely ★★★★★

Journey With the Lonely

Lil' Louis And The World / Journey With The Lonely

::★★★★★::1992::Epic::club::house::
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リル・ルイスのセカンド・アルバムにしておそらくラスト・アルバム。このアルバムに良くない評価をするひとが少なからず存在するのがとても不思議です。このアルバムはハウス史上に燦然と輝く名作だと思うんですけどね。リル・ルイスは変態的かつ独創的な「フレンチ・キッス」の評価が高すぎて、その十字架をせおってしまったとしか思えませんね。本作でリル・ルイスは前作とうってかわって非常にオーソドックスなジャジー・ハウスに転向するわけですが、どうもリル・ルイスが普通のことをやるだけで評価がさがるようなところがあるのではないかと。このアルバムは(あきらかに「French Kiss」の二番煎じをねらった「Aahhhh!」をのぞいて)ほんとうにまっとうなジャジー・ハウス。「男シャーデー」という悪口もきかれます。しかし、ここまでクオリティーの高いジャジー・ハウス・アルバムが存在するなら教えてほしいぐらいです。ヘヴィーな冒頭の「Club Lonely」に続くtr2「New Dance Beat」のフューチャリスティックな語り口と独創的なサンプル、ビートは今聴いても新鮮です。たしかに、エゲつない「Frech Kiss」や「I Called U」と同一人物とは思えないようなリリカルさと軽快さですが、良いことにはかわりありません。続く、ジョイ・カードウェルがリードボーカルの「Saved My Life」はジョー・ジャクソンの「Steppin' Out」(1982)をハウス的に展開したかのようなジャジー・ピアノ・ハウスの名曲。たしかに「フツー」ですが、徹底してミニマルな構成にリル・ルイスらしさを見ることができます。圧巻はアルバム後半。ハウス・ビートにこだわらず、ジャジーな音を組曲構成で聴かせます。ジョイ・カードウェルの柔らかなボーカルが素晴しいの一言のtr7「Dancing In My Sleep」、ビブラフォンと口笛の音を中心に流れるtr8「FunnyHow U Luv」、ルイスの囁くようなボーカルが心地よい非常に静かなtr9「Thief」、コンテンポラリーR&Bっぽいクワイエット・ストームなtr10「Share」、そして圧巻なジャズ・ハウスtr11「Jazzmen」と、一分の隙もありません。イージーリスニングに過ぎると思う人は、細やかな音響処理とミニマルな楽曲構成に、リル・ルイスらしさを見いだしてほしいとエラそうなことを思ったりするぼくであります。はい。 (4/1/03)