100th Window ★★★★

100th Window

Massive Attack / 100th Window

::★★★★::2003::Virgin::club::trip hop::
iTS US / iTS JP(→iTSについて

1990年代の最も重要なグループのひとつであり、寡作で知られるマッシヴ・アタックの5年ぶり新作。聴いた感想を一言でいえば、ついに彼らも凡作を作ってしまったかなぁという感じです。マッシュルーム、ダディーG、3Dのトリオで活動を続けてきた彼らですが、どうやら方向性の違いにより、マッシュルームが脱退したそうで、しかも家族と時間をとるためにダディーGが休養中、ということで実質3D一人で作った作品だそうです。そのせいかどうかはよくわからないのですが(三人の役割みたいなことはあまり考えたことがないし)、でもやっぱりこのアルバムは決定的に薄味です。ほとんどまったく新しい要素がない。ヒドい内容というほどでもないけど、薄い内容です。2作目「プロテクション」(1994)でトレーシー・ソーン(エブリシング・バット・ザ・ガール)、前作である3作目「メザニン」(1998)でリズ・フレイザーコクトー・ツインズ)をゲスト・ボーカリストとして迎え入れ、奇跡的なコラボレーションを生んでいたマッシブ・アタックが今回迎え入れたディーヴァはシネイド・オコナー。これも悪くないんですが、わりに当たり前かなぁという組み合わせで、で、実際聴いてみて大体予想どおりというか。てゆうか、オコナーがイギリスへの反戦へのメッセージを送った「A Prayer For England」とか、むしろ不自然な感じです。一方、2曲目の「What Your Soul Sings」は、リズ・フレイザーとトレイシー・ソーンの中間ぐらいの神秘性を帯びていて、かなり良い。あとはわりに平均的。他、ホレース・アンディの曲、3Dの歌う曲と、まあ、いつもどおりです。てゆうか、マッシヴ・アタックに「ま、いつもどおりです」なんて感想は投げたくなかったよ‥。

でもまあ、あまり多くを期待せず、箸休めと考えればそれなりに楽しめます。というのも、このアルバム、ダウナーなのはいつもと同じなんですが、全体に軽いんですよね。前作が超ヘヴィーだったのと好対照。薄味でビートも軽くて、これはこれでヒーリングっぽくて良いかも。それをある意味象徴するのがラストの「Antistar」という曲。20分近くある曲なんですが、最後の10分間はひたすら静かな電子音のシークエンスが延々鳴るだけ。このエンディングは妙にこのアルバムのテンションと合っているんだよね。同居人ちゃんは「こんなのまともな音楽じゃない」とコメントしてましたが、このエンディングは非常に効果的で、なんか映画「マイノリティー・リポート」の予知能力者たちが漬かっている培養液のようなところにたゆたうような気分になります。というわけで、マッシヴ・アタック初の「BGMになるアルバム」かもしれません。全体的なビートの妙な軽さも心地良いといえば心地良い。不満といえば不満。 (3/2/03)