ノーマン・クック(ファットボーイ・スリム)について
Norman Cook
ノーマン・クック (7/13/1963-)
genre: club/breaks/house/techno
【概観】
ぼくのノーマン・クックに対するイメエジを一言でいえば「やんちゃ坊主」ということになるかな。中堅、あるいはもうすでにベテランの域に達するクックですが、その長いキャリアを通して、いつもウィットとイタズラ好きな雰囲気を発散させてきた男、それがノーマン・クックなのであります。
クックの職業音楽家としての経歴は、ポスト・スミスのギターポップ・バンド、ハウスマーティンズ(ビューティフル・サウスの前身)のベーシストとしてはじまりました。この経歴はクラブDJとしては特異であるように思います。もちろんロックを通過したクラブDJという点では珍しくないと思うのですが、実際に一定の成功をおさめたグループから出発したという例はあまり多くないのではないでしょうか。
それはともかく。もともとレゲエやクラブ音楽により興味を持っていたクック(クラッシュの大ファンというのがいかにも!)は、ハウスマーティンズ後はDJへと身を転じます。1988年(87年?)に、アメリカのヒップホップ・チーム、エリックB&ラキムのヒット曲「アイ・ノウ・ユー・ガット・ソウル」(ボビー・バードの同名レア・グルーブ曲を使った曲)をリミックス。ジャクソン5の「アイ・ウォント・ユー・バック」を使ったポップな編曲は実にノーマン・クックらしい持ち味を出していました。そう、クラブDJだけれども、ポップ・ミュージシャンとしてのセンスが捨てきれないのがノーマン・クックなのだな。
その後ビーツ・インタナショナルというユニットを率い、1990年、クラッシュの「ガンズ・オブ・ブリクストン」のベースラインにジャム&ルイス印の初期の代表的グループSOSバンドの「ジャスト・ビー・グッド・トゥー・ミー」をカバーしたファースト・シングル「ダブ・ビー・グッド・トゥー・ミー」が全英トップに。この時代はちょうど、ロック/ポップ、ハウス、ヒップホップなどのクロスオーバーの動きが最高潮のときで、クックの雑食性とポップ・センスがうまい具合に華開いたのでありました。とにかく、レゲエ、ダブ、ハウス、ヒップホップ、英国ポップ、はたまたラテンぽい音まで、なんでもあり、それがビーツでした。
その後、フリークパワー、ピッツァマンなどのユニットに関わり、そこそこの成功を収めるのですが、ビーツ・インタナショナルほどのインパクトはなく、スチャラカにしかシーンを追っていないぼくの目前からは消えたも同然でした。90年代半ばにはファットボーイ・スリムという名義で活動しはじめ、1996年にはファーストアルバムを出します。ぼくは当時そのアルバムの存在は知っていましたが、音は聴いてなかったし、いわんやそれがノーマン・クックの変名であることも知りませんでした。
で、1998年。MTVで、アフロの二人組が闊歩する妙なビデオと曲が目につくようになります。オールディーズなロック・ギターとやかましいビート、アフロダンサーとカウボーイ姿のデブ男。最初見た/聴いたときはなんじゃこりゃと思いましたが、しだいに、そのあまりのバカバカしい単純さとユーモアに興味をひかれるようになりました。それがファットボーイ・スリムのクラブ・アンセム「ロカフェラー・スカンク」だったわけですが、のちにこれがノーマン・クックだと知ったときは驚きました。ひとつには、その押しの強い音が、どちらかといえばほのぼの路線だったビーツ・インタナショナルとはかなり違い、その違いに驚いた。というか、まあ、確かにもともと雑食&やんちゃが売りのノーマン・クックではありましたが、十数年のキャリアの中でも「ロカフェラー・スカンク」のハジケ方は尋常でないですよ。また同時に、ビーツから約十年、ようやくというか、遅咲きながらもアメリカでブレイクしたというそのしぶといパワーにもびっくりしたのでありました。とまれ、ついにアメリカでブレイクして、めでたいめでたい。ケミカル・ブラザーズとともに、エレクトロニカ/ ビッグ・ビートのパイオニアとして名を残すことになりました。
ファットボーイ・スリム路線でどこまで行くのかはわかりませんが、クックのことだから、同じ路線をずっと続けることはないでしょう。次なる手が今から楽しみですね。
【活動】
- 1985-1988
- The Housemartinsのベーシスト。アルバム2枚発表。
- 1989-1991
- Beats International 主催。こちらもアルバム2枚。
- 1990年のデビューシングルが全英トップに。
- 1994-1996
- Freak Power 主催。アルバム2枚。
- 1995
- Pizzaman 名義でアルバム発表。
- 1995-
- Fatboy Slim 名義で活動。
- 1998年 | 「ロカフェラー・スカンク」で全米でブレイク。
【Disc Reviews】
- Beats International
- Freak Power(準備中)
- Pizzaman(準備中)
- Fatboy Slim
(11/11/00)