2008年度(US編)

引き続きまして、iTS年間ベストセラー大人買い祭りのUS編です。iTunes Store USの曲ダウンロード年間50位に入った曲を片っ端から購入して無責任に感想を書きなぐる企画です。(去年書いたものは→こちら

全体的に、日本編同様去年より楽しめました。ぼくの耳がメインストリーム音楽に慣れたせいでしょうか。いや、実際面白い曲が多かったように思います。あと、マッチョなロックが今年はほとんど入っていないような気がします。

バラード一辺倒の日本編と違い、もう少しバラエティーがあるのは昨年と同様です。あと、驚いたのが、「iTunes Plus」の楽曲が大勢だったこと。「iTunes Plus」というのは普通のiTunesの楽曲よりビットレートが高く(AAC 256kbps)、かつDRMフリー(再生・コピーの制限がない)の楽曲ですが、今回は50曲中なんと42曲がiTunes Plusでした。アメリカではAmazonがDRMフリーのMP3販売をしてiTSに対抗している(しかもiTSよりちょっとだけ安いことが多い)という事情もありますが、ともあれ、DRMフリーが主流になっているという現状には感慨深いものを感じます。閉鎖的な日本の音楽業界もどうにかならないかと思ってしまいます。

というわけで、以下、感想を書きなぐります。たかだか1曲や2曲聴いただけで判断するのは無茶だと分かりつつ、お気に入り度を★で記しますが、「★★★」が標準。「けっこういいな」と思ったら「★★★★」、「これはけっこう聴くのがキツい」と思ったら「★★」。「★★★★★」は、「この曲なら何回でもリピートオッケー!」という曲です。

ではでは、本年度分。

1. Leona Lewis / Bleeding Love (2008) ★★★★

イギリスの勝ち抜きタレント番組「The X Factor」(アメリカ版の「American Idol」はこの番組の前身の「Pop Idol」から派生したそうな)での3代目チャンピオンが今年のiTS USのナンバーワンです。この人は番組のプロデューサーがものすごく入れ込んでいるそうで、計算された王道中庸バラードシンガー路線を猛然と突き進んでいるようですが、この曲を聴くと、確かに歌はけっこういい。ホイットニー・ヒューストンをもっと深くした感じか。良いです。

2. Coldplay / Viva la Vida (2008) ★★★

日本の方でも19位に入ってました。グラミーも取って絶好調。

3. Flo Rida / Low (feat. T-Pain) (2008) ★★★

うーん、この手の掛け合い?中心のサグ系パーティー・ラップはいまいち良くわからん。Jay Zあたりなら理解できるんだけど。マイアミ系の馬鹿っぽさもあまりないし…。ウーハーがぶっとぶほど爆音で聴くと良いんでしょうね。そこまでやる気はありませんが。

4. Katy Perry / I Kissed a Girl (2008) ★★★

今年流行ったらしい女性シンガー。元クリスチャンシンガーで、偽悪的キャラが売りらしい。この曲も「女の子とキスして気持ちよかったけど別にレズに走るつもりはないわ」という歌詞で、少しP!NKっぽい曲調と、個性的なボーカルが良い味出しています。

5. Rihanna / Disturbia (2008) ★★★

絶好調、リアナのヒット曲。個人的にはまあまあ。やはり「Umbrella」には遠く及ばない。比べちゃいけないかもしれないけど。

6. Lil Wayne & Static Major / Lollipop (2008) ★★★

なんかバックトラックがFlo Ridaの「Low」と同じに聞こえてしまうんだけど…。でも「Low」よりこっちの方が変態的で若干好き。

7. Jordin Spark / No Air (2007) ★★★★

American Idolの6代目チャンピオン。頑張りやのおデブちゃん…らしい。で、けっこういいです、この曲。ラブソングだけどべたっとしていない。せつないけどさわやか。こういう曲に弱いです。この曲調にSparkの清涼感のあるまっすぐな声がとても合っています。

8. Natasha Bedi / Pocketful of Sunshine (2008) ★★★

R&B? ポップ? ロック? P!NKをぐっとR&B寄りにした感じ? 覚えやすい曲ではあります。

9. Sara Bareill / Love Song (2008) ★★★

今年のチャートはえらい女性が強いな。去年のトップ10は男6、女4だったけど、今年は男3、女7です。Sara Bareillesという人はピアノを弾きながら歌う女性シンガーです。この曲、悪くないけど、特にそれ以外のコメントはないです。

10. Rihanna / Don't Stop the Music (2008) ★★★

またRihanna。もう一曲、19位にも「Take A Bow」という曲をランクインさせています。今年の3曲の中ではこのちょっとダークな曲が一番すき。リアナの声はダークなダンスソングに合う。「Ma coo sa」というバックボーカルがどうしても「Microsoft」に聞こえてしまう。

11. Madonna / 4 Minutes (feat. Justin Timberlake & Timbaland) (2008) ★★★★

マドンナ来ました。なんなんですかこの、どピンクなジャケットは。そしてティンバランドの変態トラックに乗るマドンナのボーカルはえらい線が細く、やる気ないんじゃないかと思ってしまうほど。しかも、AMGには「ネリー・ファータドの二番煎じ」と批判されていて、言われてみればその通りだなあと思ったり。しかし、テーマがアルバムジャケットとアルバムタイトル(「Hard Candy」)が示唆するように「安いポルノ」だとしたら、この曲の薄っぺらさは実に「安いポルノ」っぽくて、そういう意味でいとおかし。

12. Chris Brown / Forever (2008) ★★★★

去年チャートインした「Kiss Kiss Kiss」はあまり好きじゃなかったけど、今年チャートインしたクリス・ブラウンの2曲(この曲と23位の「With You」)はポップで割と好き。特にこの曲は、ちょっとハウス寄りでいいです。ヴォコーダー的処理をしたボーカルが匿名的でクラブ音楽っぽい。

13. Jason Mraz / I'm Yours (2008) ★★★

全然知らない人ですが、この曲はフォーキーでレゲエ調の佳曲です。

14. P!nk / So What (2008) ★★★★

なんかいつのまに結婚して離婚したらしいP!nkの離婚アルバムからの1曲だそうですが、曲調はいつものパワフルでポップなP!nkで、勢いが衰えず曲も良く素晴らしいです。

15. Usher / Love In This Club (feat. Young Jeezy) (2008) ★★★★★

こういうシンセに弱いんです。アッシャーは特に好きでも嫌いでもないんですが、この曲のポップさとクラブっぽさがツボにはまりました。しかしアッシャーはしぶといですね。デビューアルバムが1994年ですからもう15年選手ですよ。年齢はまだ30超えたばかりですが、こんなに長く一線にいられるとは思いませんでした。

16. Miley Cyrus / See You Again (2007) ★★

ディズニーチャンネル出身のティーンアイドル。同世代の少女の心を掴む等身大の歌詞で大人気だそうです。個人的にこの曲はちょっと苦手。

17. M.I.A. / Paper Planes (2007) ★★★★★

タミール系イギリス人シンガーソングライター/ラッパーの曲。全然知らなかったけど非常に良いです。クラッシュの「Straight To Hell」(1982)をベースにした曲ですが、浮遊感のある、どこか現実を離れたようなバックトラックに、童謡のようなメロディ、様々な解釈が可能な、ヴァイオレントな歌詞が乗ります。能天気なようでいて、不気味さをたたえる楽曲ですね。くせ者です>M.I.A.。クラッシュの元曲自体の良さも再確認。

18. Ray J / Sexy Can I (feat. Yung Berg) (2008) ★★★

Brandyの弟だというシンガー。けっこう好きです。あっさり味、さっぱりして後味悪くありません。

19. Rihanna / Take a Bow (2008) ★★★

リアナのバラード。リアナはあまりバラディアという感じではないですが、リアナなりの、身の丈にあったバラードになっていると思います。

20. Metro Station / Shake It (2008) ★★★

マイリー・サイラス(16位)の兄がボーカルのギターをやっているバンド。80年代ニューウェーブ系MTV音楽がモチーフのようです。この曲はカーズっぽいですね。リードボーカルの中心はサイラスの兄じゃないほうの人で、なかなか個性のある歌唱だと思います。でもまあ…パス。

21. Alicia Keys / No One (2007) ★★★★★

昨年31位にランクインしていた曲。日本のiTS Top 50にも39位に入ってました。好きな曲ですがさすがに飽きてきました。それはともかく、こうして聴くと、同じくバラードを歌ってもレオナ・ルイスアリシア・キーズはまったく違うなということが思い知らされます。レオナ・ルイスは細部まで計算と技術にこだわった、言わば演歌歌手のように定石にしたがっていますが、アリシア・キーズレオナ・ルイスに比べると実に荒い。少々のピッチのズレなどまったく意に介しません。表現したいものに対するパッション。それこそがキーズにあってルイスにないものでしょう。

22. Katy Perry / Hot N Cold (2008) ★★★★

これまた80年代っぽいテイストの曲ですね。しかしこの人のボーカルはなかなか良いですね。アラニス・モリセットP!nkと4ノン・ブロンズのリンダ・ペリーを合わせたような雰囲気で、パワフルでいて緩急もあって嫌みなく表情豊かです。気に入りました。

23. Chris Brown / With You (2008) ★★★★

エレクトロな12位の「Forever」と違って、こちらはアコースティックなミディアムテンポのバラードです。濃さはありませんが、幼さがかすかに残る声に透明感があってけっこう好きです。

24. OneRepublic / Stop and Stare (2007) ★★★★

今旬らしい、バラード系ロックバンドです。こういうのは虫酸が走るぜ!…と言いたいけれど、人気あるだけあって泣かせのツボがうまいです。泣かせと言ってもマッチョ系じゃなくて、レイディオヘッドを通過した音なのであざといにも関わらず抵抗なく聞けるのかも。悔しいけどほろりとしてしまいます。よりヒットしたティンバランド印の「Apologize」より好きです。

25. T.I. / Whatever You Like (2008) ★★★

ヒップホップですが、ほとんど歌ものと言ってよいほど歌が多い。嫌いじゃありません。

26. The Pussycat Dolls / When I Grow Up (2008) ★★

AllMusicGuideではファーギーの「The Dutchess」が「(大して才能ないのに)必死で背伸びして聴いててしんどい」(超訳)と酷評されていましたが、そのファーギーもプッシーキャット・ドールズ(PCD)の「必死さ」に比べれば余裕しゃくしゃくという感じです。それほどにPCDのこの曲からは「必死さ」が伝わってきます。聞くところによればPCDのリードボーカルのニコール(超美人)がソロキャリア立ち上げようとしてコケたそうで、「とりあえずPCDで体勢立て直さないと、へたしたらPCDも消えてしまう!」と焦っているんでしょうか、この曲では、「あたしたちはこんなにとんがってんのよ! ショービズ? 商業主義? 全部分かってやってんのよ! クールでしょ? セクシーでしょ?!」というように、PCDの位置づけが今更ながら声高に宣言されています。…その必死さに聴いててしんどくなります。曲調もブリトニーがメイクオーバー(イメチェン)でやったような使い古されたやつだし。

27. OneRepublic / Apologize (2007) ★★★

昨年13位。こちらはそれほど好きじゃないです。

28. Finger Eleven / Paralyzer (2007) ★★

ありがちなちょっぴりファンキーなハードロック。ぼくはハードロックはもっととっぽくてダサい感じの方が好きです。

29. John Mayer / Say (2008) ★★★

AMGでかなり褒められていたアルバムから。これまでのジョン・メイヤーのイメージとはちょっと違う、なんというか、ミニマル・フォークという感じの曲調。悪くないです。

30. Jesse McCart / Leavin' (2008) ★★★

ティーンシンガーらしい。歌はジャスティン・ティンバーレイクっぽいですね。個性はまだまだこれからという感じ。

31. T.I. / Live Your Life (feat. Rihanna) (2008) ★★★★

これはすごい。O-Zoneの「恋のマイアヒDragostea Din Tei)」(iTS 日本版2006年度45位)をなんとディープ・サウスのヒップホップな人、T.I.がどどーんとサンプリング、しかもリアナがそれに歌まで乗せちゃって…。コーラと刺身ぐらい食い合わせ悪そうなのに、これが意外と良かったりするからすごい。リアナがまた超はまっている。今回ランクインしたリアナの他の曲よりこの曲の方がリアナが生きているのはどういうわけか。

32. Estelle / American Boy (feat. Kanye West) (2008) ★★★★

こんな曲が入っているなんてびっくり。イギリスのシンガーだそうですが、ちょっと前にあったアシッド・ジャズのブームをほんの少し思い起こさせるような、ジャジー・ソウルです。しかも、ただのおしゃれ系音楽ではない、一癖ありそうなエステルのボーカルと曲・メロディ・歌詞の空気感が好ましいです。

33. Taylor Swift / Our Song (2008) ★★★

若いカントリー・シンガーの曲。うーん、あまりよく分かりません。普通じゃね?

34. Chris Brown / Kiss Kiss (feat. T-Pain) (2007) ★★★

昨年38位。あまりピンとこないんだよなあ、こういう曲。なんでだろ。

35. Buckcherry / Sorry (2006) ★★★

西海岸のハードロックバンドのパワーバラード。特に興味無し。今回のチャートはマッチョなロックがほんと少なくて、28位のFinger Elevenとこの曲ぐらいしかありません。

36. Colbie Caill / Bubbly (2007) ★★★★

昨年15位。アルバム欲しい。フォーキーだけど、改めて聴くとボーカルはかすかにソウルフルです。

37. Soulja Boy T / Crank That (Soulja Boy) (2007) ★★★

昨年11位。飽きた。

38. Sean Kingston / Take You There (2008) ★★★

昨年も「Beautiful Girls」を24位にランクインさせていたラガ系ティーンシンガーの曲。特に感想はありません。

39. Fergie / Clumsy (2006) ★★★★

まだシングル残ってたんだ。しぶといな〜1枚のアルバムから。AMGでボロクソ言われているファーギーですが、ぼくはこの泡沫な感じは嫌いじゃありません。この曲は使い古された50年代レトロエレクトロですが、このイージーさ、ぼくは許せます。

40. Jordin Spark / Tattoo (2007) ★★★★

7位にも入っていたAmerican Idol出身シンガー。こちらも清涼感ある歌と曲で、けっこう好き。こんな俺、駄目っすか。

41. Yael Naim / New Soul (2007) ★★★

フランス系イスラエル人(イスラエル系フランス人?)女声シンガーソングライター。なんでこんなフォークっぽいというかバスキングっぽいというか、こんな曲がヒットしたのだろうと思ったら、AppleMacBook AirのCMで使われたことからヒットしたのだそうな。個人的には特に好きでもないっす。

42. Danity Kane / Damaged (2008) ★★★

デスティニー・チャイルド/リアナ系の女声R&B。悪い曲ではありませんが、いかんせんボーカルに個性が皆無というか、他の人が歌っても同じというか、おそろしく匿名的な一品です。

43. Ne-Yo / Closer (2008) ★★★

R&Bシンガーソングライター、Ne-Yoの曲。四つ打ちリズムが特徴的な曲。悪くないです。ちょっとあっさり味すぎる気もするけど…。

44. Jonas Brothers / Burnin' Up (2008) ★★★

これまたディズニーチャンネル系のティーン兄弟のバンドで、ティーン兄弟バンドと言えばハンソンがすぐ思い浮かびますが、クォリティーは高かったが分かりやすすぎ&明るくまっすぐすぎて飽きられてしまったハンソンと違い、ジョナス兄弟はもうちょっとガラージバンドっぽく陰があって、ボーカルも表情があっていいかも。

45. Linkin Park / Shadow of the Day (2007) ★★

なんで2007年になって「ジョシュア・トゥリー」(1987)のころのU2劣化コピー??

46. Wyclef Jean / Sweetest Girl (Dollar Bill) [feat. Akon, Lil Wayne & Niia] (2007) ★★★

メッセージ色が強いらしい新譜アルバムからの1曲。この曲はわりと普通に最近のヒップホップ/R&Bの定石に沿った、ヴォコーダー、マイナーメロディ、ライブでの掛け合いを前提にしたサビ、アコギのサウンドなどにラガトーストが乗った曲であります。

47. Britney Spears / Piece of Me (2007) ★★★

去年も50位という微妙な位置に曲をランクインさせていたブリトニーちゃん。今回も47位という微妙な位置。でもしぶといといえばしぶとい。曲は…まあ普通。悪くはないです。

48. Kanye West / Stronger (2007) ★★★★

ダフトパンク・ネタ。昨年6位。

49. Flo Rida / In the Ayer (feat. Will.I.am) (2008) ★★★

この手はほんとよくわからんです。

50. Mariah Carey / Touch My Body (2008) ★★★

マライア、頑張ってますね。フツーの曲ですが、いつものマライア印、安心して聴けます。ちょっとオールドスクールなところが逆に新鮮。

以上。