ドン・プレストンについて

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Don Preston

ドン・プレストン (1932年9月21日生)
::jazz::experimental::pop::rock::

写真は、ザ・マザーズ・オブ・インベンションのメンバーとしての60年代後半のドン・プレストン。

【概観】

ドン・プレストンというと、かつてレオン・ラッセル一味でならしたギタリストがいますが、こちらはそれとは同名異人の、フランク・ザッパのマザーズ・オブ・インベンションの初代キーボード・プレイヤーです。初期のマザーズのキーボードといえば、ピアノからサックスなどの木管類全般をこなすマルチ・プレイヤー、イアン・アンダーウッドの存在感が大きく、さらにドン・プレストンといえば「マッド・サイエンティスト」キャラというイメージもあいまって、プレストンってミュージシャンズ・ミュージシャンというより、変態プレイを得意とする変態ロック・プレイヤーなのかな、とずっと思っていました。

しかし、たまたま2007年に75歳のプレストンのライブを観る機会があって(下記参照)、個人のCDなども初めて聴いてみたりしたんですが、確かに変態プレイヤーには違いないのですが、実は、出自は完全にジャズの人だということを知りました。ザッパより8歳年上で、60年代後半にマザーズに参加したときはすでに30代後半のベテラン・ミュージシャンだったということになりますが、50年代には、エルヴィン・ジョーンズ、チャーリー・ヘイデンカーラ・ブレイポール・ブレイらと活動していたということですから、こりゃもう完全にジャズな人です。オリジナル・マザーズのメンバーで、アンダーウッドとこのプレストンのみが70年代までザッパのグループに残留したことからも、プレストンがただの「マッド・サイエンティスト」キャラでなく、ミュージシャンとしての技量を買われていたことが分かります。

ジャズ・ピアニストとしては、鍵盤を強く叩くスタイルであることからセシル・テイラーに比較されるとWikipedia (en)にはあります。ジャズのリーダー作としては「Transformation」という作品が残されていますが、ハード・バップとフリージャズの中間ぐらいの好作品で、「普通に」ジャズ・ピアニストとして活動を続けていたらもっと名の知られた人になったろうになあと思います。

「普通に」とわざわざカギカッコで書いたのは、やっぱり「普通に」活動していないからです。プレストンはマザーズの時代から、ムーグやシンセに興味を強く持っており、それは今も続いているようで、ピアノにとどまる気はさらさらなかったようです。さらに、音楽的にもロック的なものから現代音楽から実験音楽まで、ごちゃごちゃで統一感もありません。商業的成功にも全然興味ないみたいだし、うーん惜しい。

(10/24/2007)