Heaven's Kitchen ★★★★

Heaven’s Kitchen

Bonnie Pink / Heaven's Kitchen

::★★★★::1997::ポニー・キャニオン::pop::rock::jp::
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■ 初期の代表作となるセカンド・アルバム

ジャケットの鮮やかな赤い髪が印象的なボニー・ピンクのセカンドアルバムは、間違いなく初期ボニー・ピンクの代表作と言える作品です。トーレ・ヨハンソンのフル・プロデュースで、前作とうってかわってポップでカラフルになり、また、前作でみせたドスの効いたアグレッシヴなボーカルは影を潜め、より等身大の、無理のない発声で歌うボニー・ピンクを聴くことができます。閉塞感にもがいて殻を破ったその結論が、「自然体」なのだと思います。無理して強がらなくても良いんだと。

とはいえ、この作品のボニー・ピンクは後の作品に比べると、まだ漢っぽさが残っているというか、凛として頑固なまでにまっすぐ前を見据えています。冒頭、アルバムが始まって2秒でボニー・ピンクは「名前があって、そこに愛があって/たとえ一人になっても花は咲いている」という言葉を聴衆に投げつけてくるのですが、その言葉は力強さに満ち、迷いというものがなく、すがすがしいほどです。

また、唱法、曲調や路線が変わっただけでなく、ソングライターとしても飛躍的に進歩しています。というより、ここでボニー・ピンクの一つの「完成形」が見て取れると言って良いほどです。駄曲が一つもありません。曲調はブルージーで泥臭かったデビュー作とはうってかわって洗練され、洋楽的になり、ポップでメロディアスになりました。

…と、ここまで持ち上げておいて言うのもなんですが、オレ個人は実は大好きってほどではないんですねえ、このアルバム。一つにはちょっと洋楽志向が強すぎて、独自性が薄れているような気がするんですよ。カーディガンズ的と言ってしまうと身も蓋もないですが、正直、どうしてもそう感じてしまう。また、一部の曲(tr3「It's gonna rain!」、tr4「Do you crash?」、tr11「Farewell Alcohol River」あたり)がビートルズ色が強すぎるのも気になります。今更かよ、とちょっと思ってしまう。このあたり、トーレ・ヨハンソンの責任かもしれませんが。

ただ、ブリティッシュ・ロック、スウェディッシュ・ポップ大好きな人ならこれらの点も気にならないでしょうし、非常に良く出来た作品でボニー・ピンクの代表作であるのは間違いありません。これを最高傑作だと考えるファンも多いと思います。オレはあまり聴かないけど。(9/1/2007)


この曲を聴け!

  • なんといっても冒頭のタイトル曲「Heaven's Kitchen」ですね。ポップながらも、凛とした力強い言葉の選択と毅然とした歌唱は、のちのより成熟したボニー・ピンクにはない清々しさがあり、ボニー・ピンクのキャリアの中ではずせない代表曲となっています。
  • シングルカットされたtr3「It's gonna rain!」、tr4「Do you crash?」も同じくらい印象に残る佳曲で、このアルバムのクォリティーを決定付けています。上述したようにちょっとビートルズっぽいところが気にはなりますが。
  • オレの隠れたお気に入りはtr5「Silence」。ファンキー! クール! ともすれば甘くなりすぎるアルバムをこの曲がスパイスのようにきりっとひきしめています。ボニー・ピンクの(数少ない)ファンク曲の最高峰。