Do You Crash? (Single) ★★★★

Do You Crash?

Bonnie Pink / Do You Crash? (Single)

::★★★★::1996::ポニー・キャニオン::pop::rock::jp::
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■ 新境地を切り開いたサード・シングル

サード・シングル。

デビュー作でブルージーでヘビーでロッキッシュな路線を聴かせ、新曲となったセカンドシングルではヘビー路線をさらに押し進めると同時にソウルフルな面を見せたボニー・ピンクですが、セカンドアルバムの先行シングルとなるこの3枚目のシングルではそれまでの路線を大きく転換します。新生ボニー・ピンクの誕生の瞬間です。

モノトーン調のイメージだったデビュー作とはうってかわり、髪の毛を真っ赤に染め、赤いシャツと黄色いパンツという鮮やかでカラフルなイメージに。プロデューサーはカーディガンズの大ヒット作「Life」(や最近ではフランツ・フェルディナンド)のプロデュースで有名なスウェーデンのトーレ・ヨハンソン。曲調はアコースティック・ギターとホーンセクションをフィーチャーした、はっきりと、モロにビートルズ的なポップ・チューンに。「Surprise!」で殻をやぶろうともがいていたボニー・ピンクはこの作品で一つの回答をオーディエンスに提示したというわけです。

ただ、確かにこの「Do You Crash?」という曲は、ブルージーでモノトーンなイメージからあざやかにポップな路線にはっきりと転換した曲ではありますが、しかし、デビュー作からの連続性という観点から考えると、この曲はセカンドアルバムの他の曲に比べるとボーカルがタフで、歌詞も「追われることに疲れ果てた今、全てをあきらめてみた/だけどそれは長く続かない、そういう人だから/ずっと海の底にいなさい、霧という静寂と狂気のはざまで/とどめを刺されて仰いだ空」という、自分の中の閉塞感を叩き付けるような内容で、曲調がビートルズ的になったとはいえ、デビュー作や「Surprise!」のビターでブルージーな精神がはっきり生きていることが見て取れます。大きな方向性の転換と前作との連続性が同居している点で、意義深い曲であります。

デビューアルバムに入っててもおかしくないtr2「かなわないこと」(ベストアルバム収録)、タイトル曲以上に新生ボニー・ピンクを感じさせる佳曲tr3「Friends, Aren't We?」(現時点でアルバム未収録)、ララバイのように静かなtr4「One Night With Chocolate」(ベストアルバム収録)など、カップリング曲のクォリティーも高い好シングル。(9/1/2007)