Thinking Out Loud ★★★

Thinking Out Loud(初回限定盤)(DVD付)
Thinking Out Loud

Bonnie Pink / Thinking Out Loud

::★★★::2007::Warner Music Japan::pop::rock::jp::
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■ デビュー作以来の凡作か

さて、映画出演、「A Perfect Sky」の大ヒット、紅白出演と「激動の年」だった2006年を経て出された9枚目のアルバムですが、「魂を売ったのか?」「いったいこれからどこへ行くんだ?」と思わせた「A Perfect Sky」のあとだけに、ファンにとっては非常に注目されたアルバムとなりました。

で、蓋をあけてみると、先行シングル「Anything For You」や、髪を黒に戻したことから予想された通り、ロック回帰、生演奏回帰なアルバムとなりました。しかも2枚目「Heaven's Kitchen」〜3枚目「evil and flowers」はブリティッシュ・ポップ、EP「Daisy」〜5枚目「Just A Girl」はフォーキー、6枚目「Present」〜8枚目「Golden Tears」はJ-Pop的でしたから、「ロック回帰」というと、ずっと飛んでデビュー作「Blue Jam」まで遡ることになります。確かに、ハードロックのtr5「Imagination」など、「Blue Jam」に入っていてもおかしくない感じ。

とはいえ、未完成なところまでデビュー作に回帰しなくても良かったのでは…と思います。

全体に曲も練れていないし、焦点もしぼれていない。ロックぽいと書きましたが、全体にはやはりポップなんだけど、今いちコンセプトが見えにくい。tr2「Broken hearts, citylights and me just thinking out loud」やtr8「坂道」、tr10「Catch the Sun」は、どこか80年代MTVポップスのような微妙にダサレトロな雰囲気が漂っているのですが、それが意図されたものなのかも良くわからない。ダサレトロな雰囲気でやるならもっと徹底してやってくれないと…。

また、ロック志向、生演奏志向といってもバーニング・チキンによる演奏とサウンドもどうにもダイナミックさに欠け、非常にビビッドだった「Golden Tears」のプロダクションチームとは信じられないほど。さらに悪いことにはボニー・ピンクのボーカルも平坦で精彩に欠けます。

さらに納得できないのが曲順。まず1曲目は「Gimme A Beat」ですが、弱い、弱いよこの曲じゃ。てゆうかこの曲なんでこんなにテンポ遅いんだ? 1曲目はこの曲じゃなくて、どう考えてもキャッチーな「Anything For You」(シングル)にすべきだった。てゆうか、この「Anything For You」がアルバムラストだなんておかしい、おかしすぎるよ! なんでアルバムラストがアルバムで一番キャッチーで明るい曲なんだよ! アルバムラストはやはり「A Perfect Sky (Philharmonic Flava)」でしょ? この曲は系統としてはちょっと浮いているし、オーケストラのストリングス入りなんだから、ラストにはちょうど良いでしょう。よし分かった、オレが「正しい曲順」を決めてやろう。こうだ!

  1. Anything For You
  2. Burning Inside
  3. 慰みブルー
  4. Broken hearts, citylights and me just thinking out loud
  5. Gimme A Beat
  6. Imagination
  7. Lullaby
  8. 坂道
  9. Water Me
  10. Catch the Sun
  11. Chances Are
  12. A Perfect Sky (Philharmonic Flava)

でもこう変えてみてもやはり楽曲が弱いなあという印象がぬぐえません。唯一の例外がドラマのエンディングテーマで使われた「Water Me」。この曲は文句なしの名曲です。でもこの曲にしたってアルバムのトーンからちょっと浮いているし…。

なんでもボニー・ピンクは病み上がりだったそうです。言われてみれば病み上がりっぽいというか、もう一つ精彩がないです。必ずしも自身の典型的な芸風とはいえない曲でヒットを飛ばしたあとだったし色々難しい問題もあったのかもしれませんが、次作に期待といったところです。(9/1/2007)


この曲を聴け!

  • このアルバムで最も良い曲は本文でも書きましたが、「Water Me」です。これはある意味「Last Kiss」以上にJ-Popっぽいバラードで、またボニー・ピンクが一線を超えたという感じがしますが、曲の素晴らしさは疑うべくもありません。ただ、これも本文にも書きましたが、アルバム制作とは別のタイミングで録音された曲なんで、アルバムのトーンにはあまり合ってないんだよなあ。
  • 先行シングル「Anything For You」は、最初聴いたとき「こんなありがちな曲でいいの?」と思った曲ですが、繰り返し聴くとなんだかクセになる曲です。
  • 「A Perfect Sky」はどうなるのかと思いましたが、「Philharmonic Flava」ということで、ストリングスが入ったバージョンとして収録されました。原曲を変にいじってないし、これはこれで良いのでは。と思いました。