Two Nuns And A Pack Mule ★★★★
Rapeman / Two Nuns And A Pack Mule
::★★★★::1987::Touch and Go::pop::rock::
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■ 意外にも直球勝負(アルビニ比)のロックアルバム
レイプマン唯一のアルバムに、ライブEPの「BUDD」をカップリングしたCD。ビッグ・ブラックがメカニカルなドラムが売りだっただけに、生ドラムになるとどうなるんだろうと興味を持って聴きました。
これが聴いてびっくり! カオス的だったビッグ・ブラックとはうって変わってこちらは実にクォリティーの高い、肉体的なロックになっています。ソニック・ユースをソリッドに、そしてテクニカルにした感じでしょうか。
カオス的・前衛的な部分が後退しているので、そこだけに注目すると「退歩」と言う印象が与えられるかもしれませんが、いやいや、これは間違いなく進歩だと思います。曲はかなりポップ(しかもかなりファンキー)になりましたが、それでもアルビニらしい毒と、ハードコアな攻撃性はまったく衰えていません。オレはビッグ・ブラックのカオス的な部分には、ただ単に未完成なだけだったという面が少なからずあったと思うので、手放しで絶賛する気にはなれないんですよ。レイプマンでは未完成な部分が確実に進歩して、よりクォリティーが高くなっています。
また、素晴らしいのがアルビニのギター。彼の独特な、メタリックでインダストリアルでカオス的なギターは、ビッグ・ブラックでも異彩を放っていましたが、レイプマンでは、フォーマットがオーソドックスなロックになり、リズムセクションの完成度が上がった分、アルビニのギターはよりパワフルになり、独創性をいかんなく発揮できるようになりました。アルビニがここまで良いギタリストだとは思わなかった。間違いなくパンク/ポスト・パンクのギタリストではトップクラスだし、ロック史上においてもこれだけのギタリストはなかなかいない。
捨て曲も一切ない素晴らしいアルバムですが、突き抜けた楽曲が一曲でもあればもっと良かった。アルビニが「発展途上だったのに解散して残念だった」と述べていたのはさもありなん。(6/1/2007)