One On One ★★★★

ワン・オン・ワン

Cheap Trick / One On One

::★★★★::1982::Epic::pop::rock::
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■ 売れなかったが個人的には好きなシンプル&ハード&ポップな作品

「これじゃいかん!」と思ったのかどうかわかりませんが、チープ・トリックはこのアルバムで「シンプル、ポップ&ハード」という初心に戻ります。実はけっこう好きなのです、このアルバム。なんせ最初に買ったチープ・トリックのアルバムですから。こういう、音楽体験の初期に聴いたアルバムって評価が甘くなりますよね。すんません。

まず、しょっぱなの「I Want You」からしてカッコいい。「Hot Love」以来のハード&ポップな幕開けです。ロビン・ザンダーのシャウトもすごいし、リック・ニールセンのギターもデビュー作以来のザクザクと切り込むような音です。続くミディアムテンポのタイトルトラックも良いんですよ。そしてパワーバラードの「If You Want My Love」に続きます。この曲は隠れた佳曲で、意外にバラードに名曲が多くないチープ・トリックとしては、トップクラスの曲です。

というわけで、この冒頭の3連発は素晴らしいと思うんですが、続くtr4「Oo La La La」が弱い。悪くないけど弱い。A面ラストとなるヘヴィーなtr5「Lookin' Out For No.1」で持ち直しますが、B面となるtr6以降が「Oo La La La」レベルの曲が続いて、息切れとなります。いずれも悪くないんだけど、小粒なのよ。tr7「Time's Running」にしてもtr9「Love's Got A Hold On Me」にしても、ポテンシャル的にはかなり良さそうな曲なんですけどねえ…なんかデモ曲を聴いているような気分になるんですよねえ。どっちも2分半ぐらいしかないし。曲を練り上げないうちにスタジオに入ってしまったのでしょうか。あるいは、脱退したトム・ピーターソン(b)の分だけ、何かがぽっかりと抜け落ちてしまったということなのでしょうか。

プロデュースは、クィーンやカーズを世に送り出したロイ・トーマス・ベイカー。分離のよいメリハリの効いた音はとても良いのですが、リバーブかけまくりのドラムの音の処理はどうにかならなかったか。時代だからしょうがないのかな。トム・ピーターソンがいればもっとリズムセクションがもっと良くなったと思います。(3/15/2007)