Dream Police ★★★★

Dream Police (Exp)

Cheap Trick / Dream Police

::★★★★::1979::Epic::pop::rock::
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■ ポップ路線を貫きつつも実験性を加えた「全盛期」最後の作品

トム・ワーマンのプロデュースによる最後のアルバムにして、チープ・トリック全盛期の最後でもあるアルバム。

「Dream Police」という文字通りドリーミーなタイトル(歌詞は悪夢的なんだけど)、そしてそこまでやるかというコスプレなジャケ。なんだか開き直りを感じさせます。内容もそのイメージ通りで、「Heaven Tonight」の世界がさらに加速しています。

まず1曲目の「Dream Police」は、あきらかに「Surrender」の延長線上にあり、さらにストリングス・シンセサイザーが使われていることもあって、より華麗でポップな印象ですが、本当はこの曲は「Hot Love」に通じるハードな曲なんですよ。ライブ盤「Music For Hangovers」(1999)のこの曲を聴けばそれが良くわかります。

続く「Way Of The World」は、前作の「On Top Of The World」の延長線上にあり、B面1曲目「I'll Be With You Tonight」はあざといまでにポップで、ドリーミー路線まっしぐらです。

…というところだけ見ると、「Heaven Tonight」のポップ版という感じがしますが、このアルバムの独自性は、A面最後の「Gonna Raise Hell」とB面最後の「Need Your Love」という2曲にあるとオレは思います。前者は9分超、後者は7分超という、これまでのチープ・トリックのスタジオアルバムにはなかった大作です。ただ、後者は「At Budokan」に収録されているので、その意味、リスナーには「衝撃」はなかったと思いますが、冷静に考えると、チープ・トリックとしてはかなり実験的な試みだったと思います。実際、チープ・トリックはその後、7分を超える新曲は1曲も録音してません。

で、個人的に、この2曲はかなり好きなんですよね。「Gonna Raise Hell」のロビン・ザンダーの「Mother!」という叫びはぐっとくるものがあるし、「Need Your Love」の浮遊するようなボーカルと印象深いベース・リフも独特で、それでいてチープ・トリックらしさを失っていないのが良いですね。

というわけで、「Heaven Tonight」のフォーマットを踏襲し、ドリーミーなストリングス・シンセを今まで以上に散りばめてポップさを装いつつ、ダークな実験性をさりげなく潜ませたクレバーなアルバムだと思います。(3/15/2007)