Cheap Trick ★★★★★

Cheap Trick

Cheap Trick / Cheap Trick

::★★★★★::1977::Epic::pop::rock::
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■ 最高にハードで最高にポップだったデビュー作

曲順に慣れねー!

このアルバム、チープ・トリックらしい茶目っけで、LPで発売された当時は片面が「Side A」で片面が「Side 1」だったんですよ。で、LPにはこのように表示されてたんです。

これだと誰だってSide Aの「Hot Love」が1曲目で「Oh, Candy」がラストだと思うじゃないですか。実際、最初のCD化の際はそのような曲順だったそうです。ところが、リック・ニールセンによれば、「その曲順はレコード会社の間違い」ということで、98年にボーナストラックとともに再CD化したとき、Side 1の「ELO Kiddies」を1曲目、「The Ballad Of TV Violence」をラストにして発売したのね。

でもオレにとっては「Hot Love」が1曲目なんだよ! 慣れないよ! 実際、客観的に聴いてみて、チープ・トリックのテーマ曲的な「ELO Kiddies」はまだ良いとしても、Side 1の他の曲はちょっと暗すぎるよ。

ということで、当「音盤メモ@ghostlawns」では、「Hot Love」を1曲目と勝手に認定してレビューします。前置きが長くなりました。

このアルバムは、チープ・トリックのベストだと考えるファンも多いと思いますが、オレもこのアルバムが最高だと思います。確かに、少々荒いというか、ジャケのモノトーンが示すように、その後のカラフルでポップな感じよりも、どこかハードボイルドでゴツゴツとハードな作品であります。しかし、この勢いには抗えません。

まず出だしの「Hot Love」のインパクトが素晴らしい。チープ・トリック史上もっともパンキッシュでスピーディーな、わずか2分30秒の曲は、ハードなだけでなく、メロウでもあります。特に、ロビン・ザンダーが一転して王子様ドリーミー・ボーカルを聴かせる繋ぎの部分にはしびれます。リック・ニールセンの、お茶目に跳ねるギターも良いし、裏でブリブリとうなりをあげるトム・ピーターソンの12弦ベースもカッコいい。で、歌詞が一見「熱い愛をおまえにやるぜ」的なものかと思いきや、そうでなく、「熱い愛を君に売ってあげる、今晩君の中に入ってもいいかい? (I'm selling this hot love for you / Hey, why won't you let me inside of you tonight?)」という、純粋な愛じゃなくて「仕事」をにおわせるあたりがチープ・トリックらしい冗談めいた悪意が感じられてすばらしい。

怒濤の「Hot Love」が終わると、トム・ピーターソンのヘヴィーな12弦ギターからゆっくりと「Speak Now or Forever Hold Your Peace」が始まります。この緩急が良いですね。どこかポエティックな歌詞のこの曲は後半に行くにつれてじわじわと盛り上がるのですが、それが終わると、間髪入れず「He's A Whore」が始まります。この曲も「Hot Love」に劣らずハードでスピーディーでポップ。

とにかくこの3連発のインパクトは大きいです。その他の曲も良く、この勢いで最後まで聴かせるアルバムです。自殺した友人の女の子に語りかける「Oh, Candy」が甘く悲しい余韻を残します。

なお、98年のCD(とiTSの配信)には5曲のボーナストラック(セカンドアルバムのためのデモトラック?)がついていますが、どれもなかなか興味深く、楽しめました。もしトム・ワーマンがセカンドをプロデュースしなかったらどんなアルバムが出来ていたか…妄想が膨らみます。(3/15/2007)