Music For Hangovers ★★★★

Music for Hangovers
Music for Hangovers [DVD] [Import]

Cheap Trick / Music For Hangovers

::★★★★::1999::Cheap Trick Unlimited::pop::rock::
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■ チープ・トリック復活を感じさせる元気の良いライブ

1997年にスタジオ盤「Cheap Trick」を出したあと、チープ・トリックは今一度アイデンティティーを見つめ直すために(って勝手に決めつけているけど)、いったんスタジオ・アルバム制作を中断して、勢力的にツアーをこなします。もちろんライブハウス中心のツアーですが、非常に好評を博し、チケットもすぐにソールドアウトするような状態でした。

ということで、1978/79年の名ライブ盤から20年の年月を経て発売された新ライブ盤。これが良いんですよ! 曲はほとんどが70年代から。全14曲の分布を見ると、デビュー作「Cheap Trick」(1977)から4曲(!)、「In Color」(1977)から3曲、「Heaven Tonight」(1978)から3曲、このあたりは定番ですね、で続く「Dream Police」(1979)から2曲選曲されている他、80年代のアルバムとしては過小評価されている「One On One」(1982)と「Next Position Please」(1983)から1曲づつというのもうれしい。で、ソフト路線の80年代末のヒット曲「フレーム」や「冷たくしないで」をはずしているところに「初心にかえる」心意気を感じます。だって、それほどヒットはしなかったデビュー作からの曲が一番多いんだもんね。ちなみに1977年の「アット・ブドーカン」の完全盤と重なるのは4曲のみというのも嬉しい。

で、繰り返すと、良いんですよ、これ。もしかしたら、これ、名盤「At Budokan」より良いんじゃないかと思う瞬間もある。もちろん、歴史的意義を考えると比較にならないけど、純粋に演奏だけを比べると、こっちの「Music For Hangovers」の方が良い。これほどバニー・カルロスのドラムがタイトで勢いがあったことがあっただろうか? リック・ニールセンのギターのフレーズがこんなに魅力的にきこえたことがあっただろうか? トム・ピーターソンの12弦ベースはあいかわらずブリブリ。ロビン・ザンダーのボーカルも変わらない。そう、全体的に、「アット・ブドーカン」よりタイトでハードなのですよ。また、オーバーダビングが非常に多い「アット・ブドーカン」と違って、こちらは聴いた感じではほとんどそのまま生。ステージで暴れすぎてギター弾く方がテキトー(で、それゆえオーバーダビングが必要)だったリック・ニールセンも、年取って、マジメに弾くようになったのかもしれません。雑なのは相変わらずですが、ライブ感あふれる良いプレイです。

で、ここが重要なのですが、タイトで勢いのある演奏、そのうえ、ギターの音が以前より現代的になったことによって浮き彫りになるのは、チープ・トリックってやっぱり新しい!ってこと。やってる曲は20年前の曲ですよ。それなのに、ヘタすると90年代の若いパワーポップ系のバンドと比べて遜色ない…と思うのは、ひいきのひきすぎかな? いや、チープ・トリックの20年前のスタジオ盤は、今聴くとちょっと音の感触が古い。でもここでの演奏や音がとても若いので、アレンジなどほとんどオリジナルのままにも関わらず、過去の曲が現代的によみがえっているのです。なんというか、とにかく曲を蘇生させる勢いがこのアルバムにはあるんですね。チープ・トリックの魅力を再確認できます。こんど地元にライブしに来たらぜったい行こう。 (5/29/03)

[追記3/15/07]DVDも出ています。未見。