Standing On The Edge ★★★★

スタンディング・オン・ジ・エッジ

Cheap Trick / Standing On The Edge

::★★★★::1985::Epic::pop::rock::
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■ 迷走期に入ったことを感じさせる作品…だが、曲はまだ行けている

80年代に入って「All Shook Up」「One On One」「Next Position Please」と、3枚連続でコケてしまったチープ・トリック。レコード会社もおかんむりになったのか、8作目となる本作では、大々的にプロダクションに口出しをしてくるようになります。

まず、Mark Radiceというキーボード・プレイヤーをあてがい、作曲に参加させます。ソング・クラフトが身上のはずのチープ・トリック/リック・ニールセンにとってはさぞかし屈辱だったと思います。また、プロデューサーは「初心に返って」荒削りなデビュー作をプロデュースしたジャック・ダグラス(エアロスミスのプロデュースなどで有名)にした…はずですが、最終的に完成したサウンドは「初心」とは似ても似つかない、電子ドラム(一部打ち込み?)やシンセなどを前面に出した、時代におもねったサウンド。

ということで、AMGでは★★と酷評されているアルバムであり、オレもつい最近までは聴いていなかったアルバムなんですが…。実際入手して聴いてみると。意外に良いではないですか! 確かに一部、特に前半でシンセや電子リズムがうざいですが、後半は意外にハードで、全体としては悪くありません。

まず、シングルカットされたtr2「Tonight It's You」(結局小ヒットにしかならなかった)は、80年代以降のいわゆる「低迷期」チープ・トリックで、もっとも印象深く良く出来たポップソングです(歌詞が凡庸だけど)。一説によれば、Mark Radiceがかなり深くかかわった曲らしいですが、詮索はともかく、曲としては一級品だと思います。

また、シンセや電子リズムばかりが取りざたされますが、後半ではギターがハードな曲が多く、LPでいえばB面1曲目に当たるだろうtr6「Standing On The Edge」やtr9「Cover Girl」やラストの「Wild Wild Woman」は、リック・ニールセンのギターリフが非常にカッコよくて、良いです。「Standing On The Edge」がアルバムの1曲目ならこのアルバムの印象はかなり変わったと思いますね。まあ、後半の曲でも、モトリー・クルーの領域に入っているtr8「Rock All Night」はちょっとどうかと思いますけどね。

一方、前半ですが、実際のオープニングtr1「Little Sister」はそれほど悪くないです。ちょっとポップすぎるかもしれませんが。ちなみにすかんちの「ROLLY HORROR SHOW」がこの曲にかなり似ています。で、tr2「Tonight It's You」も前述した通り良いのですが、前半残りの3曲がかなりシンセと電子リズムが派手に使われた曲で、ここでアルバムの印象が決まってしまっているのが残念ですね。

でもまあ、オレ的には許容範囲。けっこういけるアルバムです。(3/15/2007)