Rough And Ready ★★★★

Rough & Ready

Jeff Beck Group / Rough And Ready

::★★★★::1972::Epic::pop::rock::
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■ 評価や人気は低いが隠れた佳作

いまいち人気のない第2期ジェフ・ベック・グループですが、オレは第1期よりも好きかも。「もうツェッペリンに張り合うのは不毛だからやめ!」と思ったのかどうかはわかりませんが、第2期ジェフ・ベック・グループは、第1期のヘビーなサウンドを捨てて、よりジャジーにソウルフルになっています。そのことによって、ジェフ・ベック先生のギターは「ヘビーでなければならない」という呪縛から逃れて、自由奔放に飛翔しています。ジェフ・ベックは第1期のようなラウドなハードロックよりも本作以降の軽みのある音楽性の方が持ち味がでるギタリストだと思う。

第1期からメンバーを全員刷新した第2期ジェフ・ベック・グループの最初のアルバムである本作は、音の方向性も刷新したことがはっきりと分かる作品です。思うのですが、このころのジェフ・ベックは、マーヴィン・ゲイスティーヴィー・ワンダーダニー・ハザウェイカーティス・メイフィールドによって開拓されていた「ニューソウル」に大きなインスピレーションと影響を受けていたんじゃないでしょうか。特にスティーヴィー・ワンダーの影響があったのではないかと思ったりします。もっとも、ベックの本作品は、サウンドの方向性が一番似ていると思うスティーヴィー・ワンダーの「Talking Book」(←ベックも参加している)とは同時期のリリースですから、どちらが先とか言うこともなく、時代の雰囲気として共通点があっただけかもしれません。ただ、ベックは次作でスティーヴィー・ワンダーの「I Gotta Have A Song」(1970)を原曲に忠実にカバーしていて、しかもそれが第2期ジェフ・ベック・グループのサウンドにまったく違和感なく溶け込んでいることは指摘されるべきことかもしれません。

ということで、このアルバムはジャズそしてソウルの影響がそこらかしこに見いだせる作品です。もちろん、冒頭のtr1「Got The Feeling」はいきなり鋭くハードなギターとドラムで幕を開けるし、次のアルバムに比べると第1期のハードロック・テイストは残っているように思います。しかし、tr1「Got The Feeling」にしても、サビになるとクール&ザ・ギャングの「チョコレート・バターミルク」(1971)っぽくなって、ニューソウルの影響は明らかです。

他の曲も素晴らしく、アップテンポのtr2「Situation」、tr3「Short Business」、tr5「I've Been Used」、そしてファンキーなtr6「New Ways / Train Train」などいずれも非常にクォリティーが高く、なんでこのアルバムがこんなに世間で過小評価されているのか不思議です。

また、特筆すべきはこれらの曲はすべてジェフ・ベックの手による曲だということです。こんなにベックが作曲に力を入れたアルバムは後にも先にもこれだけです。結局あまり売れなかったからヘソ曲げて曲作らなくなったのかな。これらの曲を聴けば、ジェフ・ベックに作曲の才能があることは明らかなので、残念です。

ちなみに、ドラムはコージー・パウエルですが、ファンキーでグルービーな、非常に良いプレイをしていて、ちょっと見直しました。

痛恨なのは、唯一マック・ミドルトンの作曲によるtr4「Max's Tune」。実験的なインストなんですが、未消化なうえにあきらかにアルバムから浮いています。ミドルトンは後の名作「Blow By Blow」のキーパーソンとなるんですが、この曲はどうしたんでしょうかねえ。アルバムの流れを完全に止めてしまっています。

それ以外は素晴らしいアルバム。(3/6/07)

[追記 3/6/07]iTS USのは1曲欠け。なぜ?