Who Else! ★★★★

Who Else

Jeff Beck / Who Else!

::★★★★::1999::Epic::pop::rock::
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■ 突然エレクトロニカになって復活したギター・ゴッド

ちゃんとしたスタジオ盤としては10年ぶり。もうジェフ・ベックは引退したのかと誰もが思っていたところに、ガツーンとかましてくれました。エレクトロニカですよ。しかもインド音楽の影響少々。「新生ジェフ・ベック」の誕生です。

ただ、エレクトロニカ路線と言っても、このアルバムは「There And Back」をプロデュースしたキーボード・プレイヤー、トニー・ハイマスが総指揮を取っているので、後の「You Had It Coming」(2001)、「Jeff」(2003)ほどはエレクトロニカ色は強くなく、「There And Back」(1980)との連続性があります。「There And Back」自体、シンセがかなり取り入れられたアルバムだったし、同じことを1999年にやったらこうなったという、いわばエレクトロニカ世代の「There And Back」です。

ちなみに、オレは「There And Back」(1980)のサウンドは正直あまり評価していなくて、同じくトニー・ハイマスが中心となった「Guitar Shop」(1989)にいたっては、ちょっと許せないと思っているほどなんですが、このアルバムでのトニー・ハイマスのサウンド・プロデュースは悪くないです。やればできるじゃん!

特に、アグレッシブなtr1「What Mama Said」から、すかさずtr2「Psycho Sam」のへヴィーにテクノなイントロになだれこむところはかなりカッコよく、「There And Back」や「Guitar Shop」のとっぽい音に比べるとずいぶんとトンガっています。また、tr6「Angel (Footsteps)」はアンビエント風味の非常に美しい曲で、アレンジも良く、トニー・ハイマスをちょっと見直してしまいました。おしむらくは、後半、「Hip-Notica」「Even Odds」(後者はヤン・ハマーが手がけた曲)あたりでだれるところでしょうかね。ちょっとアイデアが尽きてしまった感じです。

ただ、上にも述べたように、ちょっと聴いた感じがエレクトロニカっぽいアレンジでも、良く聴くとギターのフレーズやメロディ自体は、「You Had It Coming」(2001)以降に比べるとずっと「オールド・ベック」に近く、また、ライブでのブルーズ曲tr3「Brush With The Blues」が収録されているし、古いファンにはとっつきやすいと思います。tr4「Blast From The East」あたりは、インド音楽の影響を受けている点以外は「There And Back」の頃のベックそのものです。

オレもこのアルバムの「新しさ」と「穏健さ」のバランスは好ましいものだと考えています。ハイ。(3/6/07)