ブラック・サバスについて

f:id:ghostlawns:20070117014607j:image

Black Sabbath

genre: pop/rock

写真はオリジナル・メンバー。左から、トニー・アイオミ(リーダー、g)、オジー・オズボーン(vo)、ビル・ウォード(dr)、ギーザー・バトラー(b)

【概観】

70年代のブラック・サバスは、現代ロックへの影響という観点からすると間違いなく最重要ロック・バンドのひとつだと言えます。しかし、同時にこれほど同時代的には過小評価されたバンドもめずらしいかもしれません。個人的には大好きなバンドですね。AC/DCとともに「もっとも素晴らしいロックバンドの一つ」だと思っています。

ブラック・サバス(オジー在籍時代に限る。それ以外は普通のヘビメタ・バンド)のすばらしさというのは、一言でいえば「シンプリシティー」というところにつきると思います。

それまでのブルーズ・ハードロックといえば、例えギターがラウドでも、それなりに表現の押しや引きを持ちこんだものでした。しかし、サバスのすごいところは、曲の構造を徹底的に単純化したというところにあるわけです。ギター・リフをひとつかふたつを延々轟音で繰りかえすだけでサバスの世界が出来るわけです。ギター・ソロよりもひたすらリフが重要。このストイックなまでの単純さが当時批評家に叩かれた所以であり、同時に今もサバスの音楽が新鮮さを失わない理由なわけです。ちょうど、T-レックスの「シンプリシティー」が同時代的には評論家受けしなかったのと同じように。

もちろんオジー・オズボーンのボーカルも忘れてはなりません。ある意味、「ロック・ボーカリストはかくあるべし!」という価値基準の真逆を行くかのようなボーカルです。抑揚もない。メロディーも平坦で、たいていギター・リフをユニゾンでなぞっているだけ(「パラノイド」に典型的)。声も海猫がニャーニャー鳴いているかのよう。ライブでは、歌いながら猫背で意味もなくステージを端から端まで往復する。

しかし、この正体不明な、宇宙人のような存在感が、ヘタすると重くなりすぎるサバスの音楽を身軽なものにしているんですよね。ほとんど奇跡のような存在です。オズボーンが脱退したあと、歌唱力も表現力も数段上のロニー・ジェイムズ・ディオが加入することになりますが、サバスの音楽性にはディオのボーカルはちょっとクドいんですよね。ラリっているオズボーンのすっとんきょうなボーカルでこそサバスです。

ついでに、ビル・ウォードのドラムも素晴しい。ちょっとジャジーでファンキーなのであります。ヘヴィーなのに軽快。ビル・ウォードがドラムでないとサバスという感じがしません。もちろんギーザー・バトラーのベースもすばらしい。

というわけで、バカみたいなコケおどしキワモノ・バンド扱いされたサバスですが、実は演奏陣もすばらしいのであります。まあ、トニー・アイオミのギター・ソロはヘタっぴですけど。

ええと、演奏について語りすぎましたが、彼らの不気味なコード進行、そして執拗なまでのリフの反復がのちのハード・ロックに与えた影響ははかりしれません。これは大げさでもなんでもなく、マジです。スラッシュ・メタル、デス・メタル、スケーターズ・ロックへの影響は当然ですが、グランジ、オルタナティブ系バンドへの影響も絶大なんですよね。サウンドガーデンなんかはブラック・サバスそのものだし。ロリンズ・バンドも音楽的にはもろサバスだし、スワンズなんかも結局あれはサバスなんじゃないか、と。こう思うわけです。え? 古い?

(1/16/07)

【活動】

  • 1969年、「Earth」としてスタート、のち「Black Sabbath」に改名。
  • 1970年、デビュー・アルバム発売。ここから1975年の6枚目まで、すべて名盤。
  • 1970年代後半になるとバンドの方向性に迷いが。オジー・オズボーン不満。
  • 1979年にオズボーン脱退、元レインボーのロニー・ジェイムズ・ディオに交代。ディオの参加はバンドに活力を戻す。でもまぁ、オズボーン期の全盛サバスのような、メタル・ファンじゃない人にも訴えかける音楽ではすでになく、良質なメタルバンドとなったわけで。
  • 1983年、ディオ脱退。その後、いろんなボーカリストやらなにやらとっかえひっかえ、わけわかめ状態。とはいえ、それなりにそれなりの活動を続けているのがえらいというか。