Agents of Fortune ★★★★

Agents of Fortune

Blue Oyster Cult / Agents of Fortune

::★★★★::1976::Columbia::pop::rock::
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■ どこまで本気? 意外に高品質ポップな代表作

ブルー・オイスター・カルトの代表作。

オレにとってブルー・オイスター・カルトは(悪い意味で)わけのわからんバンドの一つなんだけど、このアルバムはいつもに増してわけがわからない。なんつうか、いつもと芸風が違うんだよね。tr1「This Ain't The Summer Of Love」は、まあ、わりにBOCらしいダサいアメリカンブギーハードロックなんだけど、tr2「True Confessions」はなんかレナード・スキナードみたいなよろめきサザン・ロック風の曲で、「え?」と思わされ、そして続くヒット曲のtr3「(Don't Fear) The Reaper」で目が点になる。印象的なギターのアルペジオに、西海岸フォークロックバンドみたいなさわやかでメロウなボーカル&コーラスが乗るんだもの。まったくもって脈絡がない。歌詞のテーマが死神だから、そこはBOCらしいが、それ以外は全然BOCらしくない。でもこれが良い曲なんだから、聴いているこっちもどう評価して良いのかとまどうばかり。たぶんこれはBOC一世一代のジョークなんだと解釈することにしました。そう思うと、けっこうおもしろい曲です。途中一瞬ダークでヘビーメタル的な展開になるところもおもしろい。「Seasons don't fear the Reaper」というフォークロックのパロディともとれる歌詞の一節も、どことなく詩情があふれてていとおかし。

というわけで、もともとわけのわからんバンドでしたが、このアルバムはいつもに増して謎です。tr5〜tr7あたりは、いつものBOCっぽいというか、個人的に「いつものBOC」って別に好きでもないから感心もしないんですが、最後の二、三曲もまたメロウで、いや、ケッタイなアルバムです。つうか、こんなん、BOCじゃなくても良いじゃん!と思わないでもないのですが、もともと、「歌詞がオカルトまたはSF」であること以外に特に音楽的に決定的な核もない、軟体動物のようなバンドですから、こういうポップなのもありかな、と思ってしまったりします。とりあえず、穏健でポップなアルバム。

なお、CDにはボーナストラックで「Fire Of Unknown Origin」(1981)のオリジナル・デモ・バージョンが収録されていて、これがまた与太ってるしょぼい演奏で、いとおかし。