Here, My Dear ★★★★

Here My Dear

Marvin Gaye / Here, My Dear

::★★★★::1978::Motown::soul::r&b::
iTMS US / iTMS J

「離婚伝説」というとんでもない邦題がつけられた2枚組大作(CDは1枚)。妻アンナへの莫大な慰謝料を払うためにつくられたアルバムで、ジャケットにもいたるところに「離婚」「慰謝料」といったキイワードをみつけることができます。内容も赤裸々で、一曲目から語りで「My Dear、このアルバムは君に捧げるよ、あまりうれしくないかもしれないけど」で始まります。で、まず妻アンナとの出会いと悦びの日を簡単に描いた曲を冒頭におきます。しかし、その後は延々破局、憎しみ、怒り、金、といった内容が延々。よくこれをモータウン社長(=アンナの兄)が発売を許可したと思います。

さて、音楽的なことに目を向けると、これが非常に内容が濃いのです。全体的には、「I Want You」の延長線上的な内容ですが、演奏やアレンジはもっとすっきりまとまってます。一方、ファンク曲やジャズ曲をいれたりと、バラエティーも豊富。なんせ2枚組なので、まとまりはそれほどないですが、ここでの音楽的豊かさ、密度の濃さはさすがというしかないです。このアルバムのテーマ曲とでもいうべきtr3,10,14「When Did You Stop Loving Me, When Did I Stop Loving You」(すごいタイトルだな、しかし)も名曲ですが、個人的に最も好きなのはラストから二番目の「Falling In Love Again」。新しい愛への希望をのべた曲ですが、そのポジティヴなメッセージとは裏腹に、ここでのマーヴィンのヴォーカルは苦悩に満ちています。「Let's Get It On」でジャンとの新しい愛の希望を謳歌してから6年、未だにトラブルが解決しないという状況に対する、絶望と憔悴感が感じられるのです。特に、間奏のあとの「ベイビー、明日はないかのごとく愛しておくれ、さあ乾杯をして囁き合おう」というところなど、歌詞とは逆に消え入りそうな声。今にも泣き崩れそうなのです。あまり知られていない曲ですが、ジャズファンク的リズム、メロディも素晴らしい大名曲。

さて、結局離婚を成立させるも、マーヴィンはモータウンを追われるようにして去り、まbた皮肉なことに、ジャンとの新しい結婚生活もすぐに破綻、ヨーロッパでの隠遁的生活を送ることになります。 (4/9/02)