What's Going On ★★★★★

What's Going on

Marvin Gaye / What's Going On

::★★★★★::1971::Motown::soul::r&b::
iTMS US(デラックス)/ iTMS US(通常盤+ボーナストラック)/ iTMS US(ボーナストラックなし)/ iTMS J(デラックス) / iTMS J (通常盤+ボーナストラック)/ iTMS J(ボーナストラックなし) / iTMS J(「I Heard It Through...」とのカップリング) / iTMS J(「In Our Lifetime」とのカップリング)

ぼくはこのアルバムからマーヴィン・ゲイの世界に入ったのですが、最初に聴いたときは、お酒が入っていたこともあり、あと若かったこともあり(汗)、なぜだかぼろぼろと涙がこぼれてしまいました。それほど、ぼくの考える「豊かな音楽」というものに近かったんですよね。いや、豊かなだけでなく、琴線にふれるような繊細さがあるのが70年代のマーヴィン・ゲイの音楽だと思います。スティービー・ワンダーの音楽も同じぐらい豊かですが、スティービーの音楽で泣くということはぼくには考えられません。

というわけで、このアルバムはぼくにとって特別な作品であります。また、曲がノンストップでつながっており、その流れも素晴らしいんですよね。特にA面にあたる「What's Going On」から「Mercy Mercy Me」までの流れ。時代もあり、曲のつなぎは乱雑ですが、流れとしては完璧です。このA面からは「What's Going On」と「Mercy Mercy Me」の2曲がヒットしましたが、これらの曲は単独で聴く気がしません。アルバムの流れあっての2曲だと。特にぼくがマーヴィン・ゲイの最高の曲だと思っている「Mercy Mercy Me」は、非常に短く単純な曲だけに、単独で聴いては魅力が伝わらないんじゃないかと。やっぱり、「Save The Children」と「God Is Love」があるからこそ最高にかがやく「Mercy Mercy Me」なのであります。

もう一曲のヒット曲「Inner City Blues」は、ジェイミー・ジェマーソンの印象的なベースラインで勝負あったようなものです(これは「What's Going On」にもいえます)が、全編をファルセットで通したマーヴィンの初めての曲ということでも歴史的なのではないかと思います。

最後に、歌唱法の60年代に比べての変化にも注目したいところです。ストレートなシャウト型から、ファルセットを多くまじえた、緩急をつけたスタイルに変化しています。このアルバムの「Inner City Blues」ではじまったファルセットの多用は翌年の「Trouble Man」以降特に顕著であり、いわゆるスウィート・ソウルの源流になったとも言えます。

長くなってしまいましたが、語り切れない深いアルバムです。あ、でも無理に人に勧めようとも思わないんです。人が気に入ろうが気に入るまいが、ぼくにとってのこのアルバムの特別な位置付けはゆるぎはしないのであります。はい。 (4/7/02)