Absolutely Free ★★★★

Absolutely Free

The Mothers Of Invention / Absolutely Free

::★★★★::1967::Verve::pop::rock::
iTMS US

(zappa catalog #2)

このアルバムは、基本的には前作の延長線上にある作品で、コンパクトに40分にまとめられている分、大きなインパクトはないけれど、作品としての完成度は飛躍的にあがっています。前作では消化不良だった現代音楽的側面とポップスとしての側面がこのアルバムでは渾然一体となって、予測不可能な形で聴き手に提示されているのです。最初の二曲とか聴くと、ボーカルがあからさまにふざけているので、まるで酔っ払いのカラオケのようなのですが、聴き進むうちにどんどん高度な音楽性へと加速するさまがすごい。

技術的なことをいえば、ファーストアルバムではボーカル+ギター+ギター+ベース+ドラムというシンプルなロックバンド編成(5人編成)だったのがこの作品から管楽器2本、キーボード、そしてセカンド・ドラムをメンバーに加えた編成(サイドギターが抜けて8人編成)になったというのが音楽的な膨らみに大きく貢献しています。結果、6曲目「Invocation And Ritual Dance Of The Young Pumpkin」のようにクォリティーの高い即興演奏を披露できるようになったし、アルバムいたるところで聴くことができる現代音楽的な複雑な器楽演奏をふつーのポップス演奏の中にまぎれこませるというような芸当が可能となりました。これはデビュー作ではみられない重要な点です。

全体に音もよくなったのがうれしいところ。また、見のがされがちなザッパのポップソングライターとしての魅力も「Call Any Vegetable」「Status Back Baby」「Son Of Suzy Creamcheese」といった非常にポップな曲、そしてCD化に際してボーナストラックとして加えられたシングル曲「Big Leg Emma」「Why Don'tcha Do Me Right?」といった曲で堪能できる。

また、このアルバムはコンセプトアルバムとしての側面ももっていて、ザッパファンはこのアルバムをもってして「ロック史上初のコンセプトアルバム」と主張したりします。個人的には歌詞とかにはあまり興味がないのですが、このアルバムA面もB面も曲がノンストップでつながっており、しかもそれが驚く程自然な流れで、特にA面のパワーには圧倒されてしまいます(CDにおいて、ボーナス曲をA面とB面の間に収録したのも非常に良い構成だと思う)。「ザッパ史上もっとも展開がはげしい曲」として有名な「Brown Shoes Don't Make It」も収録。ザッパ史上では、有名すぎるファーストアルバムにかくれてあまり有名なアルバムではありませんが、みのがせない作品。親しみやすいのでザッパ初心者にもオススメ。

ちなみにこのアルバムとデビューアルバムの2枚は、トム・ウィルソンによってプロデュースされています。ザッパ自身のプロデュースでないザッパのオリジナルアルバムはこの2枚のみです。 (9/14/02)