Playground Psychotics ★★★

Playground Psychotics

Frank Zappa/The Mothers of Invention / Playground Psychotics

::★★★::1992::Barking Pumpkin::pop::rock::
iTMS US

(zappa catalog #60)

92年にリリースされたフロ&エディー期の発掘ライブ音盤。てゆーか、究極の楽屋オチ作品というか、耳で聴くドキュメンタリーというか。というのも、CD二枚組の約半分(以上?)は、ツアー中の、飛行機の中やらバスの中やらモーテルの中やら楽屋やらリハのステージとか、そういう場面でのマザーズのメンバーの会話を録音したものなのだから。ザッパいわく「フィールドワーク録音集」ということで。ということで、ザッパ・ファン以外には「ハァ?」としか思われないこと間違いない作品。当然英語の会話なので、日本人にもツラいか。ただ、ザッパ・ファンで、かつ英語がある程度わかる人には意外に楽しめます。なんというか、マザーズの生の雰囲気が感じられるんだよね。まるで自分がツアーバスにまぎれこんでいるかのような。ハワード・ケイランがステージでメンバーのだれかにビールを頭からかけられて楽屋で怒ってるようすとか、はっきり言ってどうでもよいといえば最高にどうでも良いんですが、なんか聴いててほほえましくも楽しい。あと、最後のほうには「200モーテルズ」の製作裏話ドキュメンタリー(未見)からの会話がおさめられてるんですが、「200モーテルズ」で「ザッパのコメディー音楽に嫌気がさしてもっとヘビーなロックバンドをやるべく脱退してしまうベーシスト」役をわりあてられた現実のベーシスト、ジェフ・シモンズが本当に「やっぱ、オレ、バンド辞めます」と言うくだりとか、妙な緊迫感があっておもしろい。ザッパが「具体的に脚本のどの部分が気にいらないんだ?」といつもの冷徹な調子で聞き、シモンズが「いや、不満てゆうか‥実際、かなりオイシイ役だと思う‥んだけど‥」と言い澱むところとか。このあたりのやりとり聞いて思ったんですが、ザッパがこのフロ&エディー期のあと、180度方向を変えてインスト中心のジャズ・ロックに走ったのは、この時代あまりにも「コメディー・ロック」と内外から言われすぎて(ってザッパが自分で率先して言っているところもあったけど)、ちょっと心外に思ったということもあるなじゃないかなって、少し思った。

ま、それはおいといて、曲のほうですが、Disc 1の目玉はなんといっても、ジョン・レノンオノ・ヨーコが飛び入りした伝説のライブ音源ですね。このライブは、ジョン&ヨーコの「Sometime In New York City」のD面におさめらたんですが(ちなみにその「Sometime...」のアナログ盤の内ぶくろが、ザッパの「フィルモア・イースト」に落書きをくわえたもの)、フィル・スペクターによってかなり改ざんされてしまっていたんですよね、ベースとかさしかえだったし。今回収録された「ザッパ版」はよりオリジナルに近いもので、ジョン&ヨーコ版では削除されていた「Scumbag」(=社会のクズ)のフロ&エディのボーカルが初めて復元されていて、おお、こりゃカコイイ! と思ってしまいましたですよ。フロ&エディってマザーズではバカばっかりやっている印象だけど、歌はソウルフルだね。Disc 2は、「Billy The Mountain」の別バージョンがおさめられてるのもいいけど、「Concentration Moon」や「Mom & Dad」といった初期マザーズの曲が洗練された形で演奏され、歌われているのが新鮮。フロ&エディ期がコメディー芝居指向じゃなくてもっと音楽指向だったらおもしろかったかも、と思うも、音楽的にまともになりすぎるかもなとも思ってみたり。ま、過ぎたことですが。

とりあえず、ファン以外は絶対買ってはいけない一枚。 (9/26/02)