Fillmore East - June 1971 ★★★★

Fillmore East - June 1971

The Mothers / Fillmore East - June 1971

::★★★★::1971a::Bizarre::pop::rock::
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(zappa catalog #12)

フロ&エディ期のザッパの代表作はなにか? これは意外に難しい質問なんですが、今のぼくならこの「フィルモア・イースト」を選びます。これが一番「らしい」アルバムだと思うんですよね。もちろん、楽曲のレベルや完成度を考えると次の「200モーテルズ」が一番の力作だといえるのですが、勢いという意味では本作が一番だと思うんですね。

このアルバムはタイトルどおり、フィルモア・イーストでのライブ盤で、フル・ライブ・アルバムとしてはこれが最初のものです。内容は、フロ&エディ期の特徴そのままで、つまり、ロック・バンドのツアーにおけるドタバタを扱った小劇で、このアルバムはグルーピー・ネタ。ロック・ミュージシャン役のハワード・ケイランとグルーピー役のエディ・ヴォルマンの会話が中心です。フロ&エディ期の常として、英語のわからない日本人には少しつらい内容でしょうか。ぼくも昔はいまいち楽しめませんでした。でもわかればけっこうオモロいのです。また、このアルバムは短いので、グルーピーをナンパするシーンに話がしぼられていて(てゆーか、グルーピーをナンパするだけで40分というのもなんだか‥)、話自体は非常にシンプルでわかりやすいということがあります。「ヒットチャートでブリット(赤丸)つきの曲を出しているかどうか」を非常に重要視するグルーピーと、それを口八丁、やりこめようとするハワードのかけひきがおかしい。てゆーか、グルーピー役のマーク・ヴォルマンがデブ&メガネだというのを想像するとより楽しい。「ブリット」という単語がでてくるたびにバンドが「バン」と音をだすのもなんだかおかしい(ブリット=弾丸)。で、さんざんすったもんだしたあげくに、「じゃあ、目にものを見せてあげよう、これがブリットつきのヒット曲だ!!」とハワードがシャウトすると同時に、フロ&エディーがいたグループ、タートルズの大ヒット曲「ハッピー・トゥゲザー」になだれこむという、なかなかスッキリしたオチであります。ザッパの寸劇ものでこういうスッキリしたオチがあるのはこれぐらいかも。

さて、話をバンドの演奏にうつしますと、非常にシンプルでストレートなロック・サウンドでカコイイ。思うに、ザッパのアルバムでは、このアルバムがもっともストレートに「ロック」っぽいのではないのかと。特に、電気オルガンとエインズリー・ダンバーのパンチのあるドラムが全体の音を支配している感じ。ソフト・マシーンのファーストみたいなものですかね。ちょっとちがうか。残念なのは、時代もあって音質がもひとつということですかね。でも、200モーテルズより良い音だと思います。

ということで、フロ&エディ期のザッパではこれが代表作。と、今は思うのであります。ちなみにCD版ではLP版のB面一曲目でA面ラストからの続きである「Willie The Pimp Part 2」がなぜかカットされてます。余計なことすんなっつの。 (9/20/02)