Chunga's Revenge ★★★★★

Chunga's Revenge

Frank Zappa / Chunga's Revenge

::★★★★★::1970c::Bizarre::pop::rock::
iTMS US

(zappa catalog #11)

オリジナル・マザーズを解散しての第一作は、いわゆる「フロ&エディ期」の前哨戦的な内容。フロ&エディ期がコメディー小劇を特徴とすると考えると、このアルバムはセリフ劇的要素が一切ないという点で、準備運動というか助走というか序章的な作品だととらえられると思うんですね。でも、セリフ劇がない分、日本人には非常にとっつきやすいし、内容も統一感があります。

このアルバムはインストと歌ものが半々ぐらいで、スタジオ録音のインストものはベーシストが「Hot Rats」に参加していたMax Bennettなので、純粋な「フロ&エディ期」の録音ではないことがわかります。もしかしたらもっとロック・オリエンテッドな「Hot Rats 2」みたいなアルバムも頭にあったのではないかと妄想したりして。インストで耳につくのはなんといっても冒頭の「トランシルバニア・ブギー」。エインズリー・ダンバーの攻撃的なドラム・プレイは、まさに「新生ザッパ」の幕開けという感じがしますね。タイトル曲も佳曲。一方、歌ものはすべて「フロ&エディ」ことタートルズのマーク・ヴォルマン&ハワード・ケイランで、歌詞も定番の「ロック・バンドのツアーとグルーピー」ネタだし、典型的フロ&エディ期マザーズの楽曲です。で、いずれもストレートでポップなブルース・ロックで、はずれの曲がありません。特に、ザッパのハード・ロック系の曲ではもっともカッコイイと思われる「Tell Me You Love Me」が白眉。のちに何度もツアーで演奏されているナンバーですが、このスタジオバージョンを超えるものは皆無。異色はライブ録音の「The Nancy & Mary Music」。ジョージ・デュークのエレピ&「口(くち)ドラム」とエインズリー・ダンバーのファンキーかつハードなドラムのインタープレイがスリリングな即興曲です。この手の曲はフロ&エディ期ではあまりないので貴重かも。残念ながらこの曲は音が非常に惡いんですが。

ということで、捨て曲がないし、親しみやすいし、オススメ。問題があるとすれば、あまりにまっとうすぎる内容ということか。もうひとつ、このアルバムのCD版の音質には不満がのこります。LP版のほうがはるかに良い音。 (9/23/02)