フランク・ザッパ:ジャズロック期について(→<a href="/ghostlawns/searchdiary?word=%2a%5bZappa%2c%20Frank%20%2f%20intro%5d" >Zappa Top</a>)

Frank Zappa (3): The Jazz Rock Era

ジャズ・ロック期
(1972 by the album release years)

【インスト中心のジャズ・ザッパ】


短期間のプロジェクトで、アルバムも1972年に2枚しか出ませんでしたが、非常に印象深い良い作品を残してくれた「ジャズ期」のザッパです。この時期にコンサートもやったようですが、是非とも正規盤の発掘ライヴを待ちたいところです。大勢のホーンセクションをしたがえて、インスト中心の、密度が濃く、同時にリラックスした雰囲気の好作品、好演奏が聴ける時期です。この前の「フロ&エディー期」が賑やかで下品でやかましく、時に不条理な芸風だったのに対し、このジャズ期のザッパはギミックのない演奏一発で勝負していて、じっくり楽しめます。

このジャズなザッパのコンセプトの萌芽が「Hot Rats」(1969) にあったのは誰もが認めるところでしょう。音楽的にもあきらかだし、アルバムジャケットやツアーのバンド名にも「Hot Rats」の二単語をみることができます。しかし、どちらかといえばアーシーでブルージーだった「Hot Rats」と違って、この時期はもっと都会的で、よりジャズ的ですね。

でも、いわゆる「ジャズ・ロック」と呼ばれるロック系、プログレ系の音楽のような観念的なところ、情緒過多に過ぎるところはなく、ほんとうにまっとうに器楽演奏に徹しているのが気持ち良い。また、エレクトリック・マイルズ的な泥沼的即興という感じでもなく、曲の型は非常にかっちりしていますね。ということで、ダークで深刻になりがちなジャズ・ロックやロック・ジャズと比較すると随分と明るくあっけらかんとしているのが特徴であり、魅力です。

ザッパのミュージシャンシップがストレートに表われていて個人的に大好きな時期。

【おもなメンバー】


ブルース色が強かった「Hot Rats」にくらべ、この時期はずっとジャズより。メンバー構成も、多重録音が多かった「Hot Rats」と違って、多人数所帯です。フロ&エディ期の(タートル)マザーズからの残留組は、ドラムのエインズリー・ダンバー、キーボードのドン・プレストン(このひとはオリジナル・マザーズからの生き残り!)、それに、ご存じジョージ・デュークです。

  • ドラム‥‥前述したほうに、ドラマーはエインズリー・ダンバー(Aynsley Dunber)のまま。16ビートのロック・ドラムが得意な素晴しいドラマーですが、ジャズの素養もあったようです。ザッパの信頼も厚かったようで、この時期2枚の作品、ともに全曲でドラムをプレイしています。「Waka/Jawaka」ではまだロック的な色ののこるプレイでしたが、次の「The Grand Wazoo」のころになるとすっかりスムーズで流麗なプレイを披露。
  • ベース‥‥この時期のベースはエロウニアス(Erroneous=「間違い」という意味)という、謎の白人プレイヤー。でも、このひとがまた非常にいいプレイをするんです。グルーヴィだし。後も先も経歴不明のひとですが、音楽ビジネス界に今いち順応できなくても良いプレイヤーっているもんですねぇ。
  • キーボード‥‥タートル・マザーズ期からの付き合いのご存じジョージ・デューク(George Duke)が中心。とくに「The Grand Wazoo」での貢献は大きいですね。彼はもともとジャズ畑だけに、この時期のザッパにはかかせない人材です。キーボードでは、60年代からしぶとく生き抜いているドン・プレストン(Don Preston)も、ムーグ関係で参加。ジョージ・デュークのエレガントさとはちがう、ヘヴィーでエレクトリックなプレイが耳を引きます。
  • ホーン‥‥ホーン関係はわんさか人がいますが、トランペットのサル・マルケス(Sal Marquez)の活躍が耳をひきます。ジャズ畑のアーニー・ワッツ(Ernie Watts, sax)の名もみえますね。
  • ギター‥‥この時期には、トニー・デュラン(Tony Duran)というひとがスライド・ギターで参加しており、適度にアーシーな持ち味の良いプレイをたっぷり聴かせてくれます。
  • ヴォーカル‥‥この時期は基本的にインスト・バンドだったのでボーカリストは存在しませんでしたが、「Waka/Jawaka」では、クリス・ピーターセンという無名の男性がリードボーカルをとった曲と、映画の「200 Motels」にグルーピー役で参加していたジャネット・ファーガソンがリードボーカルをとった曲があります。「Grand Wazoo」でも同じくジャネット・ファーガソンがちょっぴり歌っているますね。

【参考:1972年以前、以降のジャズ的アプローチ】


ジャズとザッパといえば、最初の本格的アプローチは前述したとおり、かの名作「Hot Rats」(1969)がありますが、「Weasels Ripped My Flesh」(1970)でも、マザーズ流のフリー・ジャズ的アプローチが堪能できます。

一方、1972年以降では、「Sleep Dirt」(1979)があげられるでしょう。少人数編成の演奏で、また、ザッパにとってあまりよくない時期のアルバムなので完成度は最高とはいきませんが、何曲かで聴けるインタープレイのすごさはザッパ屈指のもの。陽の目をみた「Lather」(1996)でも、70年代中期の、ジョージ・デュークがいたころのジャズ・フュージョンっぽい長尺の曲が何曲か収録されています。基本的にジョージ・デュークのいたころのザッパは、ちょっとフュージョンっぽいですね、良い意味で。

(初稿:10/25/1996、最終改訂:1/14/2003)