One Size Fits All ★★★★★

One Size Fits All

Frank Zappa and The Mothers of Invention / One Size Fits All

::★★★★★::1975a::DiscReet::pop::rock::
iTMS US

(zappa catalog #20)

「ルース期」最後のアルバムであり、70年代中期のピークを代表するアルバム。このころのザッパは商業的には下降気味で、またバンド編成も縮小傾向にあり、この少々不遇な時期はこのあと70年代終わりごろまで続くのですが、それにもかかわらず、このアルバムは本当に素晴しく豊かな内容になっています。このアルバムはいろんな顔を持っていて、たとえば、1曲目、このアルバムのハイライトのひとつである「Inca Roads」は変則リズムがこれでもかとでてくるキョーレツな曲で、多分にプログレ的といえるし(とはいえ、あいかわらずお笑い路線ですが)、一方、この曲におけるジョージ・デュークのエレピ・ソロと、スピード感あふれるチェスター・トンプソンのドラムは実にジャジー。このあたりのジャズ/フュージョンのスパイスは「Andy」あたりにも垣間見られ、この色はひとえにジョージ・デュークの功績でしょうね。デュークのピアノ、シンセサイザーのプレイというのはどこか暖かく、メロウでジャジーであり、ともすればキバツにすぎるザッパの楽曲にマイルドさとリラックスした感じを与えてくれます。一方、「Can't Afford No Shoes」や「Po-Jama People」といった無名な曲や、「San Ber'dino」などには、レイドバックしたブルージーな雰囲気があって、その意味ではブルーズ・ロック色も強いアルバムと言えるかもしれません。でも、同時にとてもポップでファンキーなんですよね。だから、ブルーズ・アルバムというのもあきらかに語弊がある。このアルバムはブルーズ・ロックでもジャズ・ロックでもなく、ポップ・アルバムなんです。親しみやすいメロディがあふれている。その意味、ザッパ入門にも最適。そうそう、ジョニー・ギター・ワトソンのゲスト参加も完璧にハマってます。とにかく、一曲たりとも捨て曲のない、充実したアルバムであり、「ルース期」の有終の美を飾った作品だと言えます。音もとても良い。 (6/25/03)