Bongo Fury ★★★★

Bongo Fury

Zappa/Beefheart/Mothers / Bongo Fury

::★★★★::1975::DiscReet::pop::rock::

(zappa catalog #21)

ドラムだけテリー・ボジオで残りのメンバーがルース期のメンバーという、「ルース期」と「テリー・ボジオ期」の狭間にあるアルバムですが、音楽的にはルース期というよりはボジオ期。で、なんと、キャプテン・ビーフハートとのフル共演作品です。ザッパとビーフハートは高校の同級生で、「キャプテン・ビーフハート」という芸名もザッパが付けたものだし、ビーフハートの代表作「トラウト・レプリカ・マスク」はザッパのプロデュースだし、ザッパのアルバムにもビーフハートがゲスト参加することはあった(「ホット・ラッツ」(1969)にボーカルで、「ワン・サイズ・フィッツ・オール」にハーモニカで)のですが、フルでの共演はこれまでありませんでした。その意味画期的。しかし、賛否両論あるこの作品、微妙な出来であります。ザッパもビーフハートも奇才、天才などと呼ばれるミュージシャンですが、同じ天才でもタイプがまったく違う。すべてを理詰めで考えるザッパに対し、詩人でありシンガーであり画家であるビーフハートは芸術的創造がすべてが直感から生まれる。だから、奇妙ではあるが、かっちりとした構成をもったザッパの楽曲には、フリーフォームなビーフハートのボーカルは今いち合わないんだよね。ミスマッチです。

しかし、ほぼライブ盤と言ってよいこのアルバム、二人の天才がマジックを生む瞬間もあります。特に、tr1「Debra Kadabra」はカッコ良いの一言。ザッパの曲ですが、泥臭いブルーズ色丸出しのイントロからビーフハート的。そしてビーフハートの天才的な咆哮が爆発します。ザッパらしい変拍子もうまくからまり、非常にうまいコラボレーションとなっています。このアルバムのもうひとつのハイライトはやはりラストのtr9「Muffin Man」でしょうか。テリー・ボジオのロッキッシュなドラムとザッパの炎のギターがぶつかるシンプルなハードロック・ナンバーです。この曲ではちょい役ですが、ビーフハートも良い味。

全体に演奏はストレート、タイト、ロッキッシュかつブルージーで音も良く、ザッパ亡き今、そしてビーフハートが音楽界から引退した今となっては非常に貴重な記録だと言えるでしょう。 (10/28/06)