Laether ★★★

Lather

Frank Zappa / Laether

::★★★::1996::Rykodisc::pop::rock::

(zappa catalog #65)

いわゆるひとつの伝説のアルバムです。ちなみにタイトルは「Lather」に「a」のうえにウムラウトが付いたもので、発音は「Leather」です(テリー・ボジオがSMプレイという設定で猿ぐつわをかまされて「Leather」とうめいた声を表現したもの)が、ウムラウトを出すとコンピュータ環境によって文字化けしそうなので避けたいのと同時に日本で長らく「ラザー」と間違って発音されていたので「Lather」と表記するのも嫌ということで、「Laether」と表記しました(ウムラウトのついた母音を「e」をつけて表記するのはドイツ人も使っている方法です。というのもウムラウトというのは「e」にひっぱられた音だから。つまり、「a」のウムラウトは「a」と「e」の間ぐらいで発音されるし、「o」のウムラウトは「o」と「e」の間ぐらいで発音される)。

どうでも良い前置きで字数を費してしまいました。さて、どういう経緯でこのアルバムが「幻」になったのか‥はザッパファンは皆知っていることですが、簡単にいえば、70年代の末にザッパが新譜をLP4枚組ボックスセットとして発売しようとしたところ、当時ザッパが契約していたワーナーが「おいおい、冗談じゃないよ」とばかりに阻止し、勝手にバラ売りしてしまい、ザッパが激怒してアルバムの全内容を「さあみんな、録音の準備はいいかい?」とFMラジオで流したり、まあそういうすったもんだがあって発売されなかった作品というわけですね。ちなみに、ワーナーが勝手にバラ売りしたのが、「In New York」(#23, 1978)、「Studio Tan」(#24, 1978)、「Sleep Dirt」(#25, 1979)、そして「Orchestral Favorites」(#27, 1979)の4作品。

さて、ようやく内容の話に入りますとですね、ここにおさめられている大半の曲はテリー・ボジオ期の曲ですが、中には「Rdnzl」をはじめ、チェスター・トンプソン/ジョージ・デュークがいたルース期の曲もいくつか入ってます。その他、ライブ録音が半分ぐらい、現代音楽っぽい曲ちらほらと、なんてゆうか、とりとめのない内容です。しかしCDで3枚組ですから、その濃さは圧倒的。

しかしこのアルバムの問題は、あたりまえなんですが、今あらためて聴くとほとんどすべての曲が既発曲だということですね。なんてったって上述の4枚のアルバムとしてバラ売りされたわけですから。バラ売りアルバムに入らなかった曲ものちのアルバムで別バージョンが収録されたり、しかもその「別バージョン」の方が良い内容だったり。新鮮味がないのが問題なのであります。だからこそザッパも生前再発しなかったんじゃないかと。あと、個人的に「In New York」の感想文にも書きましたが、このアルバムのライブ曲が好きじゃないんですよ。なんか演奏にタイトさがない気がして。その緩い雰囲気がただでさえ長いアルバムをより長くしている気がします。

このアルバムの曲を聴いたことがないひとがこのアルバムを聴いたらどういう感想をもつかな。なんていうか、そういう新鮮な気持ちで聴ける人がうらやましい。なんせ伝説のアルバムですから‥。 (10/28/06)