The Bachelor ★★★★

Ginuwine: Bachelor

Ginuwine / The Bachelor

::★★★★::1996::Epic::pop::r&b::
iTS US / iTS JP(→iTSについて

ジニュワインのデビュー作ですが、ジニュワインのデビュー作であるという以上に、90年代半ばのコンテンポラリーR&Bで最も革新的で独創的なプロデューサーであったティンバランドの最も初期の大きな達成物であるという点で意義の大きい作品。冒頭からしてR&Bのアルバムとしては異色。雨の音と雷鳴、そして映画「ユージュアル・サスペクツ」からの引用SE。その中から湧きあがってくるギクシャクしたリズムは、しなやかなグルーヴを第一にしてきた黒人音楽のリズムとは全く異質な革新的なものでした。で、このアルバムは曲と曲の間にいちいちインターミッション的に短いビートが挟まれるのですが、これらの名もないビートがどいつもこいつもカッコいい。なんというのかな、ほとんどテクノっぽいとさえ言える感覚なんだよね。曲自体はコンテンポラリーR&Bの流儀に乗っとっているし、ジニュワインの線の細いボーカルも、特にアクのない、素直なものなんだけど、とにかくバックトラックがひたすら変態的。そしてダーク。ヒットしたtr2「Pony」、の他、tr3「Tell Me Do U Wanna」、tr4「Holler」、tr5「Hello」など、立てつづけに革新的でダークなサウンド・プロダクションが堪能できます。個人的なベスト・トラックは、スティーヴィー・ワンダーの「Visions」(「Innervisions」(1973)収録)をサンプリングしたtr9「I'll Do Anything/I'm Sorry」。沈み込むようにダークで耽美的な曲であります。

ということで、ボーカルには物足りなさがありますが、ティンバランドのプロダクションの独創性と冴えがほとばしる一品。(2/27/05; 修正1/5/2007)

[追記1/3/06]iTS USのは3曲欠け。まず、イントロの曲が欠けています。映画「Usual Suspects」のサンプリングがひっかかったんでしょう。ラストの「550 What?」が欠けているのは良いにしても、プリンスの「When Doves Cry」のカバーが欠けているのは痛恨。