Layla And Other Assorted Love Songs ★★★★★

Layla

Derek And The Dominos / Layla And Other Assorted Love Songs

::★★★★★::1970::Polydor::pop::rock::
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世の中のギター好きは「ジミヘン派」と「クラプトン派」という二種類の人間に分けられまして(ほんまか?)、ジミヘン派はクラプトンを、「ホワイト・ブルーズなんて生ぬるいジャンルを作りやがって」と批判し(ほんまか?!)、クラプトン派はジミヘンを「音がギャーギャーうるさいんじゃ」と文句を言ったりしているわけですが(だからほんまか?!)、オレは間違いなくジミヘン派なんで、クラプトンの良さというのは今いちわからなかったりするわけです。しかしこのアルバムは良いです。素晴しい。

このアルバムは、クリームで必要以上にスターに祭りあげられ、ブラインド・フェイスにおいて周囲の商業的思惑にもみくちゃにされる状況に疲弊したクラプトン(←もともと内気)が、スポットライトから逃れるようにして、南部の気のあうミュージシャンたち(ドゥエイン・オールマン(g)、ボビー・ウィットロック(key)、カール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(dr))と、リラックスした雰囲気で録音したアルバム。ということで当然レイドバックしたブルーズ・ロック・アルバムとなっているわけですが、ただ「リラックスした演奏が聴けるアルバム」というだけに終わってないのがポイント。というのも、超有名な話ですが、クラプトンはこのころ親友のジョージ・ハリスンの奥さんのパティに猛烈に恋をしておりまして、その精神的葛藤・ジレンマがこのアルバムに情熱と影を落としているのです。そのおかげで、非常にエモーションの面でニュアンスに富んだ名演が連発されているのです。

パティへの思いをぶつけた超有名曲tr13「Layla」はもう説明の必要もないでしょうから、あえて触れないでおきます。で、このアルバムは「Layla」以外にも、恋と友情の間の葛藤が感じられる名曲が目白おしなのです。tr2「Bell Bottom Blues」は「Layla」に次ぐこのアルバムの代表曲の一つですが、これも悲痛な愛の歌です。「次会うときは、ぼくは別の恋人といるかもしれないけど、驚かないでね」と言っておきながらサビでは「ぼくが君を求めて床をはいつくばるのを見たいかい? ぼくをとりもどしてくれとぼくが懇願するのを聞きたいかい? 喜んでそうするよ」と言い、「I don't wanna fade away」と未練たっぷりに、そして悲しげにシャウトする。非常に説得力があり、胸を打ちます。それ以前に曲自体も素晴しいのですが。ボビー・ウィットロックとの共作tr9「Why Does Love Got To Be So Sad」も同じぐらい素晴しい。非常にシンプルな、アップテンポの、ファンキーでソウルフルなブルーズ・ハードロックですが、「どうして恋はこんなに悲しくなくちゃいけないんだ?」と連呼するクラプトンは、半ば自暴自棄になっているかのようで、そこが悲しい。スピーディーなギターソロも情熱的で、かつメロウ。悲恋系以外では、直球ブルーズ曲カバーであるtr4「Nobody Knows You When You Down And Out」も悲しい響き。「大金持ちのときは友達がよってくるけど、落ち目になるとみんな去っていくんだ。落ち目のときは誰も分かってくれないのさ」という歌詞は、「金の成る木」としてショービズで散々もまれ、利用されて疲れ果てたクラプトン自身の心の叫びなんでしょうね。

斯樣に、「クラプトン」の名を意図的にアーティスト名から隠したのとは裏腹に、クラプトンの非常にパーソナルな思いがつまったアルバムでして、そこがこのアルバムに表現の奥深さを与えています。しかし、そういった精神的な面ばかりでなく、演奏面も本当に素晴しい。バンドのアンサンブルも良いし、クラプトンとオールマンのギターのかけあいも素晴しい。ボビー・ウィットロックのソングライティングでの貢献も特筆すべきもので、例えばラストはウィットロックのソロボーカルによるスローバラードなんですが、これがまた美しく、有終の美としかいいようがない。また、オレはクラプトンのギターはそんなに好きでもないんですが、このアルバムのクラプトンのギターはオレも大好き。よくクラプトンはブルーズギタリストと言われるけれども、ファズの効いたギター音は、オレはやっぱり「ブルーズ」と呼ぶには抵抗があって、これはやはりハードロックギターだと思うんですよね。それはたとえばジミヘンの「Little Wing」のカバーを聴いても瞭然で、ジミヘン以上にハードロックっぽい演奏になっている。でも、良いギタリストであるためには正統的ブルーズギタリストでなければならないということはなく、ブルージーなハードロック・ギタリストとしてのクラプトンの魅力がこのアルバムには詰まってます。ハードロック好きなオレには当然評価が高いです。

ということで、今さらオレが何を言おうがほとんど意味がないともいえるぐらい評価が定まっている名盤ですが、オレ的にもヒットしたということで、五つ★満点です。 (2/25/05)