Los Angeles ★★★★★

LosAngeles

The Brilliant Green / Los Angeles

::★★★★★::2002::SME::pop::rock::jp::
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わっ、すごく良い! 後追いですが、デビュー作→2nd→3rdと、間を置いて順番に聞いてきましたが、デビュー作の感想が「つまんねー」、2ndが「ん? けっこうやるじゃん」、そしてこの3rdが「えっ、なんで? すごく良いんだけど‥」です。いや、はっきりいって、芸風自体はデビュー作から全然変わってない。ギターでドライブされるパクリっぽい洋楽ガールポップな曲と、シェリル・クロウ的な曲と、日本のロック/ポップスの湿った情念を感じさせる曲。これらの組み合わせなんですね、デビュー作から、ずっと。ただ、クォリティーが着実に上がってきた。

このアルバムでは、まず前作のハードな路線をさらに進めた、ほとんどハードロックといっていい曲がまず目立つ。演奏に迷いがなく、勢いがある。しかしハードになると同時に、メロウさにも磨きがかかっているんですよね。いや、メロウなだけだったらデビュー作からメロウだったわけですが、このアルバムは非常に良質なメロウさなのです。とにかく曲が良い。良いと思った前作も、最初の2曲がかなり良くても、その後中盤ちょっとクォリティーがもうひとつかなと思わせる感じだったんですが、今作は同じ高クォリティーがずっと続く。

まず、前作同様、オープニングはくぐもったファズギターで口火を切るtr1「The Lucky Star☆」ですが、ハードロック路線ながらサビでは一転してブリグリのメロウさが開花。この展開は見事。デビュー作と2作目で感じられたことですが、このバンドは(よく言われるように)強い洋楽指向があるんだけど、それがバンド本来のもちあじである日本的叙情的メロウネスといまいち融合せず、楽曲ごとに分離していた。しかしこのアルバムではその二つの要素が違和感なく融合しており、それが成功の秘密なんだと思います。続くtr2「Yeah I Want You Baby」もtr1に負けず、いや、さらにハードな(というかグランジな)曲で、このワンツーパンチはなかなかに強烈。この曲もいつもなら「洋楽っぽいね」で終わる路線だったはずですが、メロディはあくまで叙情的で、洋楽的アプローチがうまく血となり肉となっています。日本語にこだわったのも効を奏したと思います。

続くtr3「Angel Song -イヴの瞳-」は出だしはどこかブラー的ですが、さにあらず、サビでドカーンとコテコテのJPopワールドに突入。このあたりの緩急のつけかたが見事。過剰なほどにエンジェリックな川瀬のボーカルにひきこまれます。これはある意味演歌。それから、Tommy library6というサイトのこの曲のリヴューで指摘されてますが、深めのリヴァーブが嘘くさいまでに神々しい雰囲気に拍車をかけていて効果的です。同サイトで指摘されている通り、このアルバムでは全体的に川瀬のボーカルにこの深めのリヴァーブと、それからコンプレッサーのようなイフェクトがかけられていて、これが思いもよらぬ効果を上げています。だいたい、こういうふうにイフェクトをかけると声が機械的になって細かいニュアンスが伝わりにくくなり、マイナスに働くものなんですが、なぜかこのアルバムの川瀬にはこれが非常に効果的にはまっている。なぜだかはよくわかりませんが、もともとちょっと弛緩した、倦怠感のあるシンガーなので、イフェクトがそのくぐもった情感を強調する結果になったのかもしれません。

話が長くなってますが、続くtr4「サヨナラ Summer Is Over」。これが地味ながらもすげー良い曲。アコースティックギターに率いられるメロウな曲で、いつもなら「シェリル・クロウだね」で終わるような曲だけど、川瀬のヴォーカルの力と徹底して濡れたメロウさで見事な、「洋楽もどき」じゃない、日本のロックらしい曲に昇華している。以上すべて奥田曲で、このひとの作曲能力が全開ですね。アルバム開始から4曲連続ですばらしい曲の連発。続くtr5「ヒドイ雨」はギターの松井亮の曲で、ブリグリらしいハードなギターと叙情性を兼ねた曲で、これも悪くない‥けど、出だしの4曲のインパクトには負けるかな。続くtr6「☆Falling Star In Your Eyes」は弾き語りっぽい雰囲気の曲で、ラウドなアルバムの良い小休止となってますが、こういった箸休めの曲も出来が良いのがこのアルバムの強み。日本語曲ですが(←オレ的評価高し。てゆうか、このアルバムは全曲日本語詞。よくやった!)、サビは英語。しかしこの英詞を歌う川瀬のボーカルが今までに感じたことのない説得力をもっている。いや、まじで初めて英詞を歌う川瀬智子を良いと思いました。ちょっと新路線といえるのがtr9「Los Angeles」で、ブリグリ初のインストナンバー。おそらくブリグリでもっともグランジっぽい曲(だったらタイトルは「Los Angeles」より「Seattle」の方がよいような気も:-)。小品ですが、個人的にかなり好き。

きりがないのでこのへんにしておきますが、とにかく捨て曲がほとんどない。和の情念あふれる見事なパワーポップアルバム。 (10/21/04)