加爾基 精液 栗ノ花 ★★★

加爾基 精液 栗ノ花 (CCCD)

椎名林檎 / 加爾基 精液 栗ノ花

::★★★::2003::Toshiba EMI::pop::rock::jp::
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結婚、出産、離婚を経ての椎名林檎のカバーアルバムを除くと3作目。約3年ぶり。前2作があまりに素晴しい内容だったためもあってか、このアルバムは難産だったのかもしれません。実際、このアルバムは前二作とは意図的に違う方向性を目指しています。これまでアレンジの中心を担っていたベーシストの亀田師匠が離脱し、トレードマークだったハードでギター中心のラウドな直球ロックサウンドが消え、かわりに、打ち込みやストリングス、和楽器などを重ね塗りしたコラージュのウォール・オブ・サウンド。変化球の嵐で、非常に凝った内容になってます。こういうアレンジで聴くと分かるのは、椎名の曲は非常にウェットでメロウなんだな、ということ。ストレートなロックサウンドから離れたために、椎名のウェットな面が強調された感じです。ただ、そのせいでアルバム全体としてはメリハリが見えにくくなってしまっているんだよね。一曲一曲は非常に丁寧で良い出来なのだけれど、アルバム全体としてのダイナミズムが損なわれている感じ。だから、曲ごとの印象が薄くなってしまってる。これは非常にもったいない。なぜなら、曲自体はどれもほんとうに素晴しいからです。非凡としか言いようのないtr2ドッペルゲンガー」、ブルージーなtr3「迷彩」、アレンジが大幅に変更されたtr5「やっつけ仕事」(しかし間奏直後のメロディ&コード展開の素晴しさは健在)、力の抜けたボーカルが良いtr7「とりこし苦労」やtr9「意識」、非ロックなワルツなメロディが魅力的なtr10「ポルターガイスト」など、いずれも見事だし、他の曲も劣らず良く、ここまで完成度の高いアルバムもなかなかないでしょう。それだけに、「凝りすぎて平坦」になってしまっている構成は少々残念。また、ラストの「葬列」はラストを飾るにはどうにも生みだすカタルシスが小さすぎるような気がする。

でもまあ、亀田師匠のアレンジを懐かしむのは簡単だけれども、同時に亀田路線の前二作はあまりに完成されすぎていて、それ以上の展開が望めなかったのも事実。違うアプローチに走ること自体は正解でしょう。過渡期ということでしょうか。曲も良いし、また緩急ついた椎名のボーカルも一皮剥けた感じで評価できる。

でもCCCD。感じ悪いので減点。 (9/6/04)