Affection ★★★★

Affection

Lisa Stansfield / Affection

::★★★★::1989::Arista::pop::club::
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リアルタイムではそんなに熱心に聴かなかったリサ・スタンスフィールドのデビュー作ですが、今あらためて買いなおして聴きかえすと、実に良いアルバムです。スタンスフィールドといえば、コールドカットのハウス曲「People Hold On」のヒットで世に出たわけで、このデビュー作はそれにあとおしされた形でリリースされたのですが、もともとスタンスフィールドはブルー・ゾーンという、スタンスフィールドとスタンスフィールドの旦那を含む3人組ユニットで活動していたらしく、このデビュー作も、スタンスフィールドのソロ作となっていますが、実質的にはブルー・ゾーンの3人による共同作曲およびプロデュースとなってます。コールドカットはtr3「This Is The Right Time」のプロデュースで参加してますが、アルバム全体としてはあくまでブルー・ゾーンの三人の共同製作という姿勢を貫いており、そのあたり信念がありますね。

で、このアルバムの強みはなんといっても、70年代ソウルへの傾倒を痛烈に感じさせる曲の出来の良さ、70年代っぽさを当時の最新クラブサウンドで包んで現代的に昇華する賢明なアレンジ、そしてその「70年代的にソウルフルで、かつ現代的」という方向性をエレガントに、そして時にドスのきいた声で歌いあげるスタンスフィールド、これらの絶妙なコンビネーションですね。もちろん、ソツがなさすぎという面もあるし、ハウスやグラウンド・ビートを積極的にとりいれたクラブ・サウンドにはオリジナリティーはないので、一歩間違えると「ありがちな90年前後のクラブ・ポップ」になってしまうあやうさはあるし、実際今聴くとサウンドに若干古さがあるんだけど、それを14年たった今も聴く価値のあるものにしているのはやはりスタンスフィールドのボーカルの魅力ですね。ブルーアイド・ソウル・シンガーの中でも声の深さではピカ一でしょう。完璧な歌唱力という感じでもないし圧倒的な声量というわけでもないのだけれど、ちょっとした不完全さを味にできる強みがある。

あと、曲が良い。ヒットしたtr1「All Around The World」は、当時はわからなかったけど、実は、イントロの語りからメロディからアレンジから歌い方までバリー・ホワイト丸出しの世界で、「女性シンガー(しかも白人!)がバリー・ホワイトを現代に蘇えらせる」というコンセプトがなにより素晴しいし、また、それが曲の出来として完全に成功しているのがすごい。他、tr2「Mighty Love」、tr3「This Is The Right Time」、tr7「Live Together」、tr9「The Love In Me」など、佳曲がめじろおし。特にtr7「Live Together」はバリー・ホワイトマーヴィン・ゲイとハウスをあわせたような名曲。聴きこむと味がでる好盤です。 (8/23/04)